ジャンル・エリア : グルメ | 甲信越 | 自然 2022年12月22日
上高地に行ってきました。日本を代表する山の景勝地。恒例の「開山祭」が行われる4月末ごろから「閉山式」が開かれる11月の半ばまで、多くの人でにぎわいます。
訪れたのは10月末。もはや紅葉は終わりかけでしたが、有名な河童橋(かっぱばし)かいわいからも人工物のまるでない大自然を眺められました。
上高地へはマイカーの乗り入れが規制され、工事車両やバス、タクシーを除けば車の往来はほとんどありません。日ごろ、車が大きな顔をして走り回る街で暮らす身には、何ともありがたいことです。
豊かな木々や清流・梓川を見ながら河童橋から歩くこと20分。「ウェストン碑」にたどり着きます。明治時代に上高地を訪れ、その美しさを世界に伝えてくれた英国人の宣教師の記念碑です。
1937(昭和12)年に取り付けられた碑は、わずか5年で外されてしまいます。第二次世界大戦が勃発して、英国人は「敵国人」となったためです。戦乱はこんな碑にさえ、恐ろしい影を落としていたのですね。現在見られる碑は、敗戦後の47年に再び取り付けられたものだとか。
いまこの瞬間にもロシアがウクライナを攻撃している。そんな時代に、日本では安全快適に山歩きができることを感謝しながら、碑に向かって私も手を合わせました。
再び河童橋まで戻ります。少しおなかがすきましたね。橋のたもとのホテル白樺荘のカフェで「山賊バーガー」を買いましょうか(800円)。松本市の名物「山賊焼き」を大きなパンではさんだもの。
見事な景色と澄んだ空気、下界から担いできたワインと合わせて、お昼のひとときを楽しみました。
一つご注意が。上高地では近年、サルなど野生の動物が出没し、人間が捨てたごみをあさるのだとか。食べ残しを捨てたり、ごみを放置したりすることはおやめください。(三品信)
▼ガイド 上高地へは松本市の松本駅からアルピコ交通上高地線で終点の新島々駅へ。バスに乗り換えて、1時間ほどで着きます。帰りのバスは予約が必要です。観光シーズンには名古屋から夜行バスも直行します。また岐阜県高山市の濃飛バスセンターからバスで平湯温泉まで行き、そこで上高地行きバスに乗る方法もあります。上高地観光旅館組合の「上高地公式ウェブサイト」が詳しいです。
(中日新聞夕刊 2022年12月22日掲載)