暖かい日が続いていた初冬ですが、
12月半ばに入って、急に冬らしい寒い日が増えてきました。
楽しめる花が少なくなっていくこの時期の
リーダー的存在であるサザンカの今年の様子を知りたくて、
たくさんの品種がそろう「愛知県植木センター」(愛知県稲沢市)を訪れました。
愛知県植木センターは、
農林業関係者に対する
緑化用樹木の生産及び造園に関する知識と技術の向上を目的として、
植木産業の盛んな稲沢市に設置された施設です。
敷地面積は約4ヘクタールで、
展示見本園や果樹園、整枝剪定(せいしせんてい)実習場のほか、
ウメやツバキ、サザンカ、アジサイ、ムクゲなどの品種見本園があり、
自由に見学できるよう一般にも開放されています。
↑センター入り口。
門前の植え込みは、カンツバキの代表的な品種「獅子頭」。
↑入ってすぐの道の脇では、
半球状にカットされたサザンカがお出迎えしてくれました。
↑園内案内図で大体の位置を把握します。
↑園内の花マップ。
イラストや見ごろ時期が明記してあり、
お目当ての場所が探しやすいです。
↑園内には、白いサザンカの生け垣も。
立て札によると「大和富士」という品種のようです。
↑サザンカ品種見本園。
↑見本園に植栽されている品種が記された看板。
地元産のものをはじめとした33品種を展示しているとあります。
↑職員の方によると、
1986年の開園当初は1品種につき3本ずつ植えられていたそうですが、
時間の経過とともに生育具合の良くないものも出てきて、
本数には若干変動があるようです。
↑今年は咲き始めが例年より少し早かったそうで、
早咲きの品種では既に盛りの過ぎてしまったものがあったり、
霜に当たって花びらが凍傷のようになってしまっているものも、ちらほら。
それでも、
これだけ多くの品種を一度に見られることは滅多にないので、
観賞を楽しみました。
以下に、
立札で品種名が確認できたサザンカの花たちを紹介します。
↑まずは、濃い紅色シリーズ。
上段、下段ともに、左から右へ、
上段「美濃の誉れ」、「紅サザンカ」、「伊達錦」、
下段「旭の海」、「田子の月」、「緋の司」。
紅サザンカは稲沢市発祥で、
全国に広まった品種なのだそうです。
↑少し濃いめのピンク色の花と、
遅咲きの品種で、まだつぼみしかなかった品種たち。
上段、下段ともに、左から右へ、
上段「緋乙女」、「四国紅」、「昭和の栄」、
下段「絞り笑顔」、「都の春」、「笑顔」。
つぼみたちは遅咲きらしく、
暖かい季節を連想させるような品種名ですね。
特に真ん中の「都の春」は、
枝の先につぼみがたくさん付いていて、
全部咲いたら華やかになりそうです。
↑薄めのピンク色シリーズ。
上段、下段ともに、左から右へ、
上段「磯千鳥」、「新乙女」、「祖父江乙女」、
下段「奈良の都」、「乙女」、「御美衣」(おみごろも)。
この色合いは、乙女系の品種が多いようです。
稲沢市内の地名「祖父江」が付いた品種も。
↑覆輪または絞りが入ったシリーズ。
上段、下段ともに、左から右へ、
上段「春雨錦」、「大和富士」、「丁字車」(ちょうじぐるま)、
下段「緋の衣」、「蝶の遊び」、「揚羽蝶」(あげはちょう)。
丁字車は、
中央にぎっしりと詰まったオシベが
丁字(クローブ)の花の形に似ていることから
付いた名前だと思われます。
このようなオシベの形状は、
(昔の)中国の子どもの髪型に似ていることから唐子咲きとも呼ばれ、
キクやツバキといった花の品種では見たことがありましたが、
サザンカでは初めて見ました。
↑ほぼ白色シリーズ。
上段、下段ともに、左から右へ、
上段「日の出錦」、「皇玉」、「朝倉」、
下段「雪月花」、「富士の峰」、「銀月」。
こうして並べてみると、
一口に白色といっても、
いろんな趣のものがあるんだなあと再認識しますね。
サザンカは、
ほかにもツバキ品種見本園の西側をはじめ、
園内各所で見ることができます。
せっかくなので、
サザンカ品種見本園以外にも、
園内で咲いている花たちを探してみました。
↑ツバキの品種見本園で咲いていた花たち。
左上から時計回りに、
「チャノキ」、「通い鳥」、「ベニワビスケ」、「シロワビスケ」。
直径2センチほどのかわいらしいチャノキの花は
もう盛りを過ぎているようでしたが、
ほかのツバキたちは、
早咲きの花がちらほら咲きかけている感じで、
まだ開店準備中という雰囲気です。
↑「利休七選花」を集めたエリアに咲いていた
シロワビスケ(ツバキ)。
利休七選花は、
安土桃山時代の茶人・千利休が愛した7種類の花。
当地は茶の湯が盛んな地であったという縁から、
企画されたスペースとのことでしたが、
この時期に咲いていたのはシロワビスケだけでした。
ツバキの品種見本園よりも日当たりがいいのか、
咲き具合が早く、散ってしまった花も多かったです。
↑約100品種・200本が植えられている
ウメ品種園で咲いていた早咲きのウメ。
左が「初雁」(はつかり)、右が「曙」。
園内(駐車場脇)にはロウバイも数種類あるのですが、
まだ一輪も咲いていませんでした。
ロウバイよりも先にウメの花を見られるなんて、
ちょっとびっくりしてしまいました。
↑木の花たち。
左上から時計回りに、
「ヒイラギ」、「ゴシキヒイラギ」、「ナリヒラヒイラギナンテン」、「ヒイラギナンテン」。
ヒイラギは、秋に咲くキンモクセイなどと同じモクセイ科の小高木。
ヒイラギナンテンはメギ科の常緑低木で、
葉の形状がヒイラギに似たナンテンの仲間であることから
その名が付いたとされています。
↑開花期の長い花や、時期外れの狂い咲きの花も。
左上から時計回りに、
「ローズマリー」(シソ科/開花期は10月~5月)、
「キソケイ」(モクセイ科/ジャスミン=ソケイの仲間、開花期は初夏)、
「サティナー」(おそらくバラの品種名)、
「エリゲロン」(キク科/別名ゲンペイコギク、開花期は5月~11月)。
平日しか開園していないのが玉にキズですが、
様々な植物の見本園や、
面白い形に剪定された木があって、
興味の尽きない、とっても楽しい散策となりました。
感染症には十分気をつけて、
寒い時期も健気に咲く花たちに元気をもらいに訪れてみてはいかがでしょうか。
(伊吹おろしが吹き付ける地域なので、寒さ対策はしっかりとしていってくださいね!)
心おきなく花を楽しめる日々が戻りますように。
取材日:2022年12月19日
愛知県植木センター
愛知県稲沢市堀之内町花ノ木129
TEL:0587-36-1148
※午前9時~午後5時開園、土曜・日曜・祝日・年末年始(12月29日~1月3日)は休園、ただし、ウメの開花期に当たる2月最終土曜からの1カ月間は、土曜・日曜も開園。
交通アクセス
○公共交通機関
名鉄本線・国府宮駅またはJR稲沢駅から、名鉄バス稲沢線(矢合系統)に乗り、「矢合観音」停下車、北東へ徒歩約20分。
◯車
名古屋第二環状自動車道・清洲西ICから北西へ約7km。
※無料大駐車場有り。
- まころーど
- 名古屋生まれ、名古屋育ち。
季節の移り変わりを観察するのが大好きなアラフィフ世代。新聞記事制作や、出版社にてガイド本等の制作経験あり。
現在は、旅や町ネタに関する記事を執筆しています。観光や販促のお手伝いも。