2018年05月19日
「ホワイトデー」の風習が日本独自のものだとはよく知られている。3月14日、米国ではもちろん特筆すべき日ではないが、代わりに、男性は1カ月前に本腰を入れる必要がある。
2月14日のこと。取材の合間に街を歩いていると、バラの花束を抱えて歩く男性を目にした。どこで買ったのかハート形の赤い風船と花束を抱えるアジア系男性も。
その日、米国では男性が女性に日頃の感謝や愛情を伝え、花やチョコレートを贈ったり食事をもてなしたりする日だった。日本とは真逆だ。あわてて近くの店に立ち寄り、妻と長女にチョコレートを買った。
帰宅後にチョコを手渡すと、妻は「良かった」と胸をなでおろした。聞くと、長男のサッカー練習の送り迎えで会ったすべてのママたちが「今日は旦那がディナーを作ってくれるのよ」と話していたのだとか。背中に冷たいものを感じた。
妻と長女は例年通り、私と長男にチョコをくれた。間一髪、わが家は日米の文化両立を果たした。安堵(あんど)していると、妻が言った。「日本人ならホワイトデーも忘れないでね」。はい。忘れてはいません。 (石川智規)