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ロンドン 緊張と緩和に揺られ

2019年04月23日

 150年ほど前、ロンドンでは世界で初めて地下鉄が開通した。日本の江戸時代末期のころだ。そんな歴史ある乗り物が、私の通勤手段である。

 酔客らで混んだ夜の帰宅時は少々気が張る。「すり」への警戒からだ。ロンドンの地下鉄では年間、5000件ほどの窃盗事件が確認されている。「混雑した地下鉄では荷物は胸の前で抱えるんだぞ」。日本をたつ前、知人の英国人から注意もあった。

 だが、2月上旬の夜に被害に遭った。私が背負ったリュックの後ろではしゃぐカップルがいた。降車して間もなく、2人は私の背中にぶつかって速足で立ち去った。不審に思いリュックを開けると、財布は残っていたが、札と小銭が消えていた。2人は車内で財布を盗み、現金を抜き取って戻したようだった。

 以来、地下鉄での緊張感は増した。ただ、心を和まされることも少なくない。

 お年寄りや幼児が乗り込むとさっと座席を譲る人が目立つ。赤ちゃんを抱いた女性が立っていると、別の女性客が「赤ちゃんよ。誰か席を譲って」と呼び掛ける場面も目にした。地下鉄で「紳士の国」の温かさも感じられる。 (藤沢有哉)

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