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中国・丹東 「威嚇」には慣れっこ

2019年05月13日

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が特別列車で中国に入ると聞いて訪れた国境の街、遼寧省丹東(りょうねいしょうたんとう)は私服警官だらけだった。こういう光景を見せつけられるたび、うんざりする。

 鴨緑江(おうりょくこう)を望むレストランでもカフェでも、それと分かる人たちがこちらをチラチラ見ている。路上に出れば、今度は一定の距離を置いて尾行してくる。

 彼らは話しかけてはこないが、自分の存在を隠そうともしない。むしろ私に気づかせようとしている。監視していることを私にわざと見せることで威嚇しているわけだ。残念ですが、こちらはもう慣れっこになっているので効果はありません。

 列車が丹東駅を発車直後、警戒態勢が解かれた。警官は家路を急いでいる。もう誰も私になど関心を持っていない。息苦しいほどの物々しさは打って変わり、いつもの中国が突然戻ってきた。その落差がすごい。

 外国要人に警備が必要なのは分かる。しかし、われわれに対する威嚇的な行為は何のためなのか? 外国人記者を見張るため、毎回どれほどの人的エネルギーとコストを使っているのか、責任ある人はよく考えた方がいいと思う。 (浅井正智)