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中国・洛陽 そっくり 読経の声

2020年11月24日

 古都として名高い河南省洛陽郊外の白馬寺を訪れた。2千年前に建立されたとされる中国で最古の仏教寺院だ。

 本堂の前で手を合わせたら、中から「なーんもあーみーとぅおーふおー」と声が。僧衣に身を包んだ白馬寺の僧侶たちが、厳かに経を唱えていた。

 読経の声は、一瞬「日本のお坊さんか」と勘違いしたほど似ていた。「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」の発音は近く、歌のような節回しは日本のお経とよく似ていた。

 中国の文字は漢字。日本人は欧米人と比べ、中国語を少し学習すれば、中国の文章の意味をつかむことは比較的容易とされる。だが発音や文法の差異は大きく、会話すると、まったく違う言語だと痛感させられる。

 なので読経が日本と似ていたのは少し不思議だった。だが本堂の裏手でヒントを見つけた。そこには真言宗の開祖、空海(弘法大師)の銅像があった。

 9世紀、空海は中国で仏教を学び、洛陽も訪れた。空海ら多くの僧が何世紀にもわたり中国を訪れ、中国の僧と一緒に読経し、学び、知識を持ち帰ったことが、日本仏教の土台になったのだろう。読経を聞きながら思いを巡らせた。(坪井千隼)