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北京 ネットでは心届かず

2020年07月25日

 中国では毎年、4月上旬の「清明節」に合わせ墓参りをする風習がある。だが今年は、新型コロナウイルスの影響で墓参りをやめる人が多かった。

 墓参りは屋外とはいえ人が密集するため、各地の地方政府は墓地への入場制限をかけて予約制にしたり、清明節の前後の墓参りを禁止したりした。代わりに地方政府が用意したのが、インターネットを使った墓参りなのだが、周囲の知人に聞いたところ、すこぶる評判が悪い。

 30代男性会社員は「子どもだましだ。墓参りを禁止した地方政府が、言い訳に作っただけでしょ」と手厳しい。中国では新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ネットを使った在宅授業や在宅業務が普及したが、さすがにネット墓参りの普及は難しかったようだ。

 男性は今年、墓参りをせずに自宅近くで、祖先があの世で困らないように偽の紙幣を燃やす中国伝統の風習を行った。「お墓に行かなくても祖先をしのぶことはできる。大切なのは気持ち」。伝統を無視して当局が慌てて準備したネット参りでは、中国の人々の気持ちを捉えるのは難しかったようだ。 (坪井千隼)