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ロンドン 落書きに感じたこと

2020年08月15日

 新型コロナウイルスによる外出制限が始まって2カ月。ロンドン西部の自宅周辺で、落書きを目にすることが増えたように感じる。

 近くのバス停の広告板は黒色スプレーで塗りつぶされた。久々に乗った地下鉄でも、扉の内側いっぱいに書き殴りの跡が。いずれも拭われたり、白色スプレーで塗り重ねられた後で「SOS」など一部しか判読できなかったが、社会にたまったストレスを目にしたように感じた。

 英国では外出制限による精神面への悪影響が懸念されている。王立精神科医学会は今月中旬、「新型ウイルスによる心の健康への影響は破壊的だ」との声明を発表した。外出制限後、従来の患者は外出を恐れて来院を控える傾向がある一方、家族、友人に会えないストレスや先行きへの不安などから新規患者の緊急診療が急増しているという。

 学会は診療を控える患者の重症化を心配しつつ「今後、津波のように患者が来る恐れがある」と警告する。パブなどの飲食店が開き、生活が大きく従来に近づくのは早くても7月。ストレスが和らぐ時期まで、オンラインや電話によるサポートの拡充が欠かせない。

 (藤沢有哉)