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独ベーリッツ 医療崩壊しないわけ

2020年09月29日

 ベルリンの南西へ電車で、1時間ほど走ったところにあるベーリッツ。白アスパラガスの産地として有名だが、ここに19世紀末に建設された巨大なサナトリウム跡がある。

 結核患者用と一般患者用、それぞれ男女別に4つのエリアに分かれ、総面積は200ヘクタール(東京ドーム42個分)にも及ぶ。60以上の建物があり、電力を供給する専用の石炭火力発電所まであった。

 2度の大戦中は軍病院として機能し、第一次大戦に伝令兵として従軍し、負傷したヒトラーも入院していたという。現在は廃虚となった病棟や施設の一部が公開されていて、高さ20メートルほどの空中回廊から眺めることができた。

 昔の様子が写真と共にパネルで解説されているのだが、驚いたのは施設の充実ぶり。調理棟で作られた食事は電動カートで各病棟に運搬。感染症対策のため、使った食器の洗浄に食器洗い機が完備されていた。

 新型コロナウイルスの感染拡大にも医療崩壊を招くことなく対処できているドイツ。医療体制が充実している理由が、こうした歴史とつながっているような気がした。 (近藤晶)