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ソウル 88五輪の負の遺産?

2020年09月27日

 街中の広場などで見かける丸く太って動きの悪いハトを韓国では「鶏バト」と呼んで忌み嫌う人が多い。「シッ、シッ」。そう言いながらけげんそうな表情を浮かべて、ハトたちを追い払う人にしばしば出くわす。

 「ふんをまき散らして不衛生。羽の色も汚いし、ぶくぶく太って醜いじゃない」。普段は穏やかな性格で誰かの悪口を言うのを見たことのない韓国人の友人たちも、ハトには厳しい。日本でもふん害が問題になり、餌を与える人は多くなくなったが、ここまでではない気がする。

 「88の苦い記憶」。友人が明かした。1988年のソウル五輪の開会式で「平和の象徴」として、白ハトを飛ばした。だがその一部が聖火台に止まってしまう。直後、聖火が点火され、焼け死んでしまったという。

 国際映像でその模様が生放送され、世界で恥をかいたという思いと、小さな命を犠牲にしたという罪悪感。それらがない交ぜとなり、ハトへの嫌悪感情が形成されたという説は有力だ。

 韓国の経済発展の一因となった32年前の五輪が、人々の心に刻んだ意外な負のレガシーかもしれない。 (相坂穣)