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独ノルトハウゼン トンネル工場の虐殺

2020年12月31日

 第二次大戦中にナチスが設置した強制収容所には特異なものがあった。ドイツ中部ノルトハウゼン郊外の「ミッテルバウ・ドーラ強制収容所」では当時、最新兵器とされた弾道ミサイル「V2」などの製造に囚人たちが動員されていた。

 兵器工場があったのは、岩山を貫く全長約2キロの平行する2本のトンネル内。北側から部品を搬入し、南側から完成品を搬出する製造ラインのようになっていた。

 ガイドツアーに参加すると、トンネル内の一部を見学できるのだが、新型コロナウイルスの影響で閉鎖中。またしても、という感じだった。

 収容所では当初、収容者のバラック建設よりも、工場整備が優先され、囚人たちはトンネル内で寝起きさせられていたという。「環境は劣悪で飢えや寒さのために、数カ月間で5000人以上が命を落とした」とガイドの女性が教えてくれた。

 収容所に殺害を目的としたガス室はなかった。だが、収容者延べ6万人のうち2万人が死亡したとされる。囚人たちが使い捨てのように扱われた強制労働も大量虐殺にほかならないと戦慄(せんりつ)した。 (近藤晶)