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韓国・南海 過疎化…「村が消える」

2021年08月04日

 潮がひいた干潟を掘ると、直径数センチの穴がいくつも現れた。みそをといた海水をまき、長い筆のような道具を差し込んで上下に動かす。しばらくしてゆっくりと引き上げると、シャコが食らい付いていた。

 6月下旬、韓国南部・南海(ナメ)郡の小さな漁村を訪れた。南海はソウルから車で約4時間。点在する島と海が織りなす雄大な自然を楽しめる景勝地だ。

 韓国は首都圏への一極集中により、地方では過疎化が進む。この村も一時は1000人以上が暮らしていたが、今では120人まで減ったという。かつて農地だった土地も、多くが荒れたまま放置されている。漁業も衰退し、活路を見いだそうとしているのが観光業。シャコをつかまえる潮干狩りもその1つだ。

 国や自治体も支援しているが、問題は担い手がいないこと。潮干狩りを運営する組合の代表は「62歳の私が1番若い。若者はみな村を出て行ってしまった」と嘆く。多くは70歳を超え、80代も働く。過疎は日本でも社会問題だが、人口の半分が首都圏に住む韓国は一層、深刻。「このままでは、いずれ村はなくなる」。代表は深いため息をついた。 (中村彰宏)