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ソウル BTS食堂の指定席

2021年10月22日

 空色のペンキで塗られたピアノが、誰でも弾けるように、ソウル駅前の広場に置かれている。日本では数年前から「駅ピアノ」を扱うテレビ番組が人気を集め、各地で演奏待ちの列ができる。それに比べ、韓国で駅ピアノを演奏する人はまだチラホラといった感じで少ないが、私は好きで、よく聞きに行く。

 教育熱が高い韓国ではピアノ教室の指導も熱心だという。確かにピアノが上手な若者が多い。クラシックやビートルズなどの名曲に交じって、意外な曲を弾く人もいる。人気アニメ「鬼滅の刃(やいば)」のテーマ曲、映画「菊次郎の夏」の主題歌で知られる久石譲さんの「サマー」など日本の曲だ。昨今の日韓の政治対立などとは関係なく、純粋に音楽を楽しむ開放感が心地よい。

 先日、出勤中に寄ってみると、ピアノは故障していた。豪雨の水が内部に染み込んだという。「屋外設置のピアノの管理は大変だけど、誰もが芸術家になれる機会を守りたい」。猛暑の中、調律師が鍵盤を1つ1つ外して、音を調える姿があった。これまで以上に駅ピアノにありがたさを感じた。

 (相坂穣)