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北京 やり過ぎの「厳格さ」

2021年12月07日

 中国でデルタ株により新型コロナウイルスが再流行した夏、家族で上海から北京に引っ越した。PCR検査の陰性証明と北京市専用の健康コードを提示しなければ空港で北京行きの旅券は受け取れない。「コロナ戦時下」ではチェックインカウンターの職員は首都の番人。健康確認は取り調べのようだった。

 北京に到着した後にもPCR検査を受けた。当然、陰性だ。

 商業施設に入るにもマクドナルドでコーヒーを買うのにもスマホの健康アプリで行動記録を付けなければいけない。その際、スマホの顔認証ロックを外すためにマスクを下げるのだが、その瞬間に警備員に「しっかりマスクを着けろ」と叱られる。

 「ここまでやらなくてもいいとみんな分かっている」。あるマンションで対策にあたる担当者がこぼした。自分が管轄する場所で感染者が出た場合の言い訳のために、責任者は必要以上に厳しい措置を現場に押しつける。現場は必要以上に「厳格」な態度でそれを実行する。

 中国政府はコロナ禍における社会主義の優位性を強調するだけでなく、2年近くたってなお最適な対策に至らない要因も検証してほしい。 (白山泉)