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北京 健康アプリ 吉か凶か

2022年03月04日

 「あなたは10日前にインフルエンザのワクチンを接種している。まだ新型コロナのワクチン接種はできません」。先日、3度目のコロナワクチン接種のため北京市の病院を訪れた際、告げられた。病院職員が私の旅券番号を端末に入力すると、過去に各種ワクチンをいつ、どこで接種したか詳しいデータが表示された。

 「当局が個人情報を管理する中国らしい」と思いつつ、日を改めて接種した。中国製の不活化ワクチンよりも効果が高いとされる米ファイザー製などを打ちたかったが、当地では日本人でも中国製ワクチンを打つしかない。接種後は腕が痛くなり微熱が出たが、副反応はごく軽かった。驚いたのが、接種してから数分でスマホの健康アプリに記録が反映されたことだ。

 この健康アプリは、個人の行動記録をもとに感染リスクを判定し表示する仕組み。商業施設や空港では必ず提示を求められる。中国はアプリなどIT技術を活用し国民の膨大な個人情報を収集、管理して感染抑圧につなげている。国家が個人情報を握る危うさと、感染防止との折り合いをどうつけるのか、考えさせられた。 (坪井千隼)