2022年03月24日

　パステルカラーで彩られた家々が斜面に並ぶ。韓国南西部の光州（クァンジュ）市にある「青春鉢山村」。１９７０年代から多くの工場労働者らが暮らした庶民の街は高齢化により、空き家が増加。１０年ほど前から、若手芸術家らを呼び込み、再生が進められた。

　高台に立つカフェやハート形のブランコは、会員制交流サイト（ＳＮＳ）に投稿する写真の「映（ば）え」にこだわる若者に人気だと聞いていた。期待して訪れてみると、新型コロナウイルス禍でやはり観光客は激減しており、寂しい気持ちになった。

　だが、ある壁画の前だけは、活気があった。描かれていたのは、Ｋポップグループ「防弾少年団（ＢＴＳ）」の光州出身のメンバー、Ｊ-ＨＯＰＥさん（２７）。数年前に彼が故郷への愛を込めて作ったラップがあると、訪れたファンが教えてくれた。

　♪俺は全羅南道（チョルラナムド）光州ベイビー　みんな押せ、０６２-５１８

　０６２は、光州の市外局番を、５１８は、１９８０年５月１８日から軍が民主化デモを武力鎮圧した「光州事件」を示す。軽快なダンスと温厚な笑顔で世界を魅了するスターが、故郷の歴史と政治課題を見つめる思いに興味がわいた。　（相坂穣）