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韓国・高陽 漢江にも地雷の脅威

2022年05月09日

 韓国ソウルの真ん中を流れる漢江(ハンガン)沿いの自転車道を西に向かって十五キロほど進むと、隣接する京畿道高陽(キョンギドコヤン)市に入る。休日にサイクリングでしばしば訪れた市が今年に入り、ある規制を導入したことを知った。

 地雷が爆発する恐れがあるため、市内の漢江で一般市民の釣りを禁止する−。北朝鮮軍の南侵を防ぐために南北の軍事境界線付近に仕掛けられた地雷が、夏場の増水などの際に流出して、市内の漢江周辺まで到達。近年、釣り人らが誤って地雷を踏み、足を切断するなど重傷を負う事故が相次いでいたという。

 高陽市の水辺には、絶滅危惧種のマナヅルやオジロワシなど千種類の動植物が生息。水鳥の保全などを目的とするラムサール条約で登録された湿地もある。私も雄大な風景を眺めて癒やされてきた一人だが、地雷の脅威が潜んでいるという現実を前に、暗たんとした気分になった。

 周辺で見つかる地雷はプラスチック製の対人地雷も多く、金属探知機では発見できず、除去は容易でないという。市民が再び安心して河川敷に入れるようになるのは、いつになるのか。朝鮮戦争が終わらない韓国の切なさを痛感した。 (相坂穣)