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ポーランド・ヘルボンヌ 人生2度目の避難…

2022年06月24日

 ウクライナと国境を接するポーランド南東部ヘルボンヌ。ウクライナ避難民が3月下旬、徒歩やバスで、国境検問所を経て越境してきた。キーウ(キエフ)から逃げてきたイラさん(50)は、ポーランド側で娘(20)が到着するのを待っていた。

 イラさんが住み慣れた土地を追われるのは、これが2回目。1回目は14歳のとき、原発事故が原因でウクライナ北部チェルノブイリから避難した。父は技術者として原発で働き、物心つく前から暮らしていた村だった。突然「逃げろ」と言われ、ほぼ何も持たず村を去った。

 イラさんの人生には常に「ロシア」が近くにある。旧ソ連時代、父は原子力潜水艦の技師として働き、イラさんが生まれたのも原潜基地のあるロシア極東カムチャツカ半島。チェルノブイリでの暮らしを経て、今度はロシアの侵攻で国を追われた。

 「また逃げることになるなんて、思いもしなかった」。娘が着くまでの間、たき火にあたりながらぽつぽつ話してくれた。徴兵の可能性のある夫は国外に出られない。「どこに行くかまだ決めていない」。日が暮れ、遠くの民家の煙突から煙が上がり始めていた。 (蜘手美鶴)