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ワシントン 野生キツネ無実の罪

2022年08月23日

 「この前のキツネ、捕まって安楽死させられたそうですよ」。会社でホワイトハウスや国務省からの大量の発表文をチェックしていると、以前書いた記事の続報が米紙ワシントン・ポストの地方版に載っていると女性スタッフが教えてくれた。

 ワシントンのスミソニアン国立動物園で、アメリカンフラミンゴ25羽が、金網にできた穴から侵入した野生のキツネに殺された。続報によると、逃げたキツネは再び飼育エリアに現れ、仕掛けられたわなにかかった。侵入方法を覚えると繰り返し鳥を襲うおそれがあるとして、園が安楽死させたという。

 ところが事件はこれで終わらなかった。その後に同紙が訂正を出し「捕まえたキツネがフラミンゴを殺したかどうか園は確認できなかった」のだという。これには市民からも疑問の声が上がり、専門家が「報復のために別のキツネを殺す必要はない」と非難する事態になった。

 緑豊かなワシントンでは、市街地に野生動物が迷い込むことも少なくない。あまりに気の毒な結末に、死んだキツネも「しっかり調べもせずに殺すなよ」と恨み節を言っているかもしれない。 (浅井俊典)