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ソウル ほろ苦いビール事情

2022年10月04日

 学生だった20年前に留学した韓国には、軽くて薄味のラガービールしかなかった。焼酎と混ぜて飲むのに適した味だともいうが、コクがある日本のビールが恋しく、割高な輸入品のキリンやサッポロをたまに買って飲んでいた記憶がある。

 当時に比べ、韓国産ビールは圧倒的に充実した。スーパーやコンビニの棚にはIPA、ペールエールといったクラフトビールを含め多種多様な銘柄が並ぶ。日本のビールもあるが、片隅でひっそりという感じだ。

 2019年の日本製品不買運動を境に、勢力図が大きく変わったと聞く。日本からのビール輸入額は18年に7800万ドルだったのが、20年には600万ドルに激減。日本政府による半導体材料の輸出管理強化への反発は大きく、折しも品質を上げてきた韓国産ビールに置き換わる転機になったという。

 3年がたち、多くの韓国人の日本製品に対する忌避感は薄らいでいる。だが、ビール好きの私も、いまでは日本ビールに匹敵するほどの高品質な韓国産クラフトビールに手が伸びる。政治的な事情を別にしても、日本勢が盛り返すのは容易ではなさそうだ。 (木下大資)