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カイロ いいヒツジの選び方

2022年10月17日

 今年もイスラム教の「犠牲祭」のシーズンがやってきた。祭りでは生きたヒツジを屠(ほふ)るのが習わしで、祭りが近づくと街の精肉店からはヒツジの鳴き声が響いてくる。いいヒツジは取り合いで、客たちは祭りの数日前からヒツジを選びに店を訪れる。

 犠牲祭では親族単位でヒツジを1頭購入し、屠った肉を複数家族で分け、貧しい人にも配り歩く。1年で最も大切な行事の1つで、カイロ支局でも毎年1頭買っている。私もヒツジ選びは3回目で、だんだんと「目利き」になってきた自負がある。

 いいヒツジのポイントは「若さ」だ。若いと肉が柔らかいため、腰の肉付きや角の巻き具合、歯の大きさなどから判断していく。助手に「素人と思われると値段をごまかされる」と言われ、今年は真顔で「歯が大きくない?」「産地は?」など玄人ぶった質問も織り交ぜてみた。

 その甲斐(かい)あってか今年のヒツジは「当たり」。みんなで肉を分け、近所に配った。翌日、支局の冷凍庫を開けると、皮をむかれた頭部があった。助手が「私の分だから置いておいて」。いや、奪う気など全くないが、余すところなく食べてくれるようで何よりだ。 (蜘手美鶴)