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ソウル オモニの「カップ飯」

2022年10月14日

 水産市場の街として栄えてきたソウル市の鷺梁津(ノリャンジン)地区は2000年代から、公務員試験や資格試験のための予備校が立ち並ぶようになった。当地で「考試院(コシウォン)」と呼ばれる簡易宿泊施設とともに、受験生らを支えてきたのがB級グルメ「カップ飯」を売る屋台で、歩道上に約20店が並ぶ。

 カップ飯はその名の通り、発泡スチロールのカップに白飯を盛り、炒めたバラ肉、目玉焼き、キムチなどを混ぜて食す。1食4000ウォン(約400円)ほどと安価。昼食時、受験生から「オモニ(母)」と呼ばれ愛される、韓定希(ハンジョンヒ)さんの店のカップ飯を味わった。

 就職難の中、地方からソウルに出てきた若者が、客の大半を占める。「授業が忙しい? 少し疲れて見えるよ」「腹痛はもう治った?」。韓さんがカップ飯を準備しながら、常連客たちに声をかける。

 40代の私が場違いかなと不安になると、韓さんは気さくに話してくれた。「最近はサラリーマンも多い。物価高で食材が高騰しても、うちは値上げを我慢している」。味、値段、気遣いの3拍子がそろっていた。 (相坂穣)