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カイロ テヘランからの「声」

2023年01月15日

 9月末、テヘランの「彼女」とようやく連絡が取れた。イランでは同月中旬から、イスラム教徒の女性が髪を覆う「ヒジャブ」の着用を巡り、女性らの抗議デモが続いている。国内ではインターネット接続が制限され、昨年来の友人である彼女とも音信不通になっていた。

 通信アプリで届いたのは、「私の体は大丈夫。でも、心は平気じゃない」。イランでは宗教や国籍を問わず、女性はヒジャブ着用の義務がある。しかし、デモ隊の女性らはヒジャブを脱ぎ、自らの髪を切り、女性の権利と自由を訴えている。この様子に心を痛めているのだろう。

 イランは保守的なサウジアラビアなどと違い、完全に髪を隠す女性は少ない。前髪を少し出すなど、おしゃれにヒジャブを身に着けている。ただ、「かぶらない」という自由はなく、あからさまに髪を出すと道徳警察の取り締まりにあう。

 彼女の最後のメッセージは、「抑圧された女性の『声』になって」。昨年テヘランを一緒に歩いているとき、彼女は道徳警察に注意され、ヒジャブを直していた。警官に謝る彼女を思い出し、託されたメッセージの重さを痛感した。 (蜘手美鶴)