2022年11月29日

　朝、通勤の会社員らがせわしく行き交うバンコクの大通り。銀行のＡＴＭブースのガラス越しに、派手な服の女性２人が気持ちよさそうに寝入っているのが目に留まった。夜通し飲み明かしたのか。あまり遭遇しない光景に、スマホのカメラを向けてしまった。それが３年前、赴任したてのころ。あふれる喧噪（けんそう）と活気、刺激に洗礼を受けた。

　その後、半年で新型コロナウイルス禍に覆われた。昼も夜も人影は消え、皆の表情が沈んだ。いつ終わるのか。そう思い続けた２年余、観光名所のナイトマーケットも、なじみになった食堂もマッサージ店も次々に閉じ、企業の撤退も耳にした。

　ただ、その間も、高さ４００メートル超の新たな最高層ビルの建設は進み、名物の渋滞も、人気レストランの行列も今や、戻った。商機を見逃さず、新規開店や新たな事業参入がめじろ押しだ。

　ただでさえ、目まぐるしく変貌する街だが、コロナ禍がむしろそれを後押ししたように思える。任期を終えた私に「またいつか、次に来るときは街並みも空気も一変している。それも楽しみに」とタイ人の知人。今の風景を目に焼き付けながら帰国の途につこう。　（岩崎健太朗）