2023年03月15日

　仕事帰りにソウル近郊の金浦（キムポ）市の知人を訪ねた際、通称「地獄鉄」と呼ばれる韓国の地下鉄の混雑ぶりを体感した。

　国会議事堂がある汝矣島（ヨイド）や金浦空港を結ぶ９号線の特急は特に混雑がひどい。ドアが閉まる直前に体を押し込んでくる人に圧迫され、体をよじることもできない。梨泰院（イテウォン）で起きたばかりの雑踏事故が頭をよぎる。

　金浦空港駅で金浦都市鉄道に乗り換える途中、人の流れが止まった。誘導灯を手にした警備員らが、ホームへ下る階段の手前でいったん人波を止め、前の列車が出発してから下るよう促している。

　階段を下って納得した。都市鉄道はわずか２両編成でホームが異常に狭く、利用者が殺到したら雑踏事故が起きかねない。金浦市はベッドタウンとして再開発が進み、新しいマンション団地が次々に造られているのに、列車の輸送能力が追いついていないようだ。

　この駅の雑踏管理は、梨泰院の事故を受けて始めた措置らしい。韓国の全人口の半分が集中する首都圏が抱える構造的な問題がありそうだが、悲劇の教訓を生かそうとしているのは救いだ。　（木下大資）