2023年05月04日
2021年の夏まで暮らした上海で春節(旧正月)の連休を過ごした。「ゼロコロナ」で北京への出入りが厳しく制限されていたため、家族にとっては1年半ぶりの上海。友人と抱き合って再会を喜ぶ妻と子どもたちを見て、この春節には各地で久々に帰省した人々が同じ光景を繰り広げただろうと想像した。
最初の会話は「もう感染した?」「私たちも」が定番だ。医療崩壊する中で市販薬が手に入らないのは不安だったが、余っている薬を譲り合いながら感染爆発を何とか乗り越えてきた。
知人の中には新型コロナウイルスに感染して亡くなった人もいる。公式に発表されていない人も多いが、上海市民の政府への信頼は既に失墜している。友人は「新型コロナは弱毒化したと急に専門家が言い始めた。それなら2カ月のロックダウンは何だったのか」と鼻で笑った。
ゼロコロナの風物詩だった白い防護服の人は消え去り、代わりに街のあちこちで春節を彩る赤いランタンが揺れて美しい。まともな生活は戻ってきたが、ゼロコロナの空騒ぎを経て、政府に対して面従腹背の市民が増えたようにも感じた。
(白山泉)