【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 世界の街
  4. ヨーロッパ
  5. リトアニア・ビリニュス タピオカを食す理由

リトアニア・ビリニュス タピオカを食す理由

2023年05月07日

 リトアニアは中世の趣を残す東欧の国。意外なことに、「台湾特産」をうたったタピオカ専門店があちこちにある。

 リトアニアは台湾に議員団を送り込み、欧州では台湾支援の急先鋒(せんぽう)。自国がロシアを盟主とする旧ソ連に併合された過去から、ロシアと仲良しの中国を嫌う。日本では台湾産パイナップルを買って台湾を応援する動きがあったが、リトアニア人のタピオカ店通いも似た動機とか。

 首都ビリニュスで入ったのがアジア人の男性店員のいるカフェ。「台湾の方ですか」と聞くと「いえ、中国人です」と申し訳なさそうに答えてくれた。男性は、ビリニュスの大学を卒業し、3年前に「台湾タピオカカフェ」を開いたという。

 台湾情勢や中ロ関係について質問したが、男性店員は「政治的な話は…」と歯切れが悪い。リトアニア社会の「中ロ憎し」の空気と、自らの国籍の板挟みとなっているようだ。

 「じゃ、リトアニアは好き?」と聞くと今度は即答した。「もちろん。自由があるから」。そこで私たちは大笑い。受け取ったカップのストローを吸い込むと、タピオカは勢いよく口に滑り込んだ。 (小柳悠志)