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ベラルーシ・ミール 独裁より怖いロシア

2023年06月05日

 東欧ベラルーシは、ルカシェンコ大統領の独裁体制が4半世紀も続く国だ。

 「平和」を意味するミールという街で、タクシー運転手にルカシェンコ政権について尋ねると、意外にも評価は悪くない。「独裁だろうと、ベラルーシの主権を守れる元首がいい」。そう言ってロシア軍のウクライナ侵攻を引き合いに出した。

 ウクライナでは9年前、反政権デモが起きて親ロの大統領が追放された。結果、ロシアが反発し、侵攻が始まった。一方のベラルーシでは3年前、民主化を求めるデモが起きたが、政府の弾圧でつぶされた。だが皮肉にも、独裁体制が続くおかげでロシアの侵略は防がれ、独立国家の体裁は保てている−。運転手の理屈はこうだった。

 「体制が揺らいだ国を、プーチン(ロシア大統領)はすぐ己の帝国に組み込もうとする」と運転手はぽつり。ベラルーシではウクライナが攻め込まれてから、「独裁よりロシアからの攻撃の方が怖い」と感じる人も多いらしい。近隣の大国に支配され、おびただしい血が流れたこの大地。ひとときの平和を守るため、国民はかくも悲愴(ひそう)な覚悟で生きるのか。 (小柳悠志)