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日出づる処の誕生

日出づる処の誕生 奈良県橿原市、明日香村、桜井市 遺跡が語る古代ロマン

飛鳥寺に鎮座する日本最古の仏像。その大きさから飛鳥大仏と呼ばれる=奈良県明日香村で

飛鳥寺に鎮座する日本最古の仏像。その大きさから飛鳥大仏と呼ばれる=奈良県明日香村で

 奈良県の真ん中、橿原(かしはら)市や明日香村、桜井市は、日本という国が生まれたところだと考えられ、最も古い寺社や古墳、宮殿の遺跡がいくつもある。歩けば何かを語り掛けてくるのでは-。そんな思いで旅をした。

 明日香村の飛鳥寺(あすかでら)という小さな寺に、日本最古の仏像(釈迦如来坐像(しゃかにょらいざぞう))があるという。まずそこを訪ねてみた。飛鳥大仏というだけあって大変大きく、しかも至近距離から拝観できる。植島宝照(うえじまほうしょう)住職は「推古天皇の代、609年に、渡来人の孫である止利(とり)仏師によって作られました。やや面長な大陸風の様式です。以来1400年、ずっと動いておりません。聖徳太子が拝んだ仏像を、同じ場所から拝むことができます」と解説する。

 寺院自体も日本最古の創建といわれ、三つの金堂を持つ巨大な伽藍(がらん)を有していたが、火災で焼けてしまった。唯一残った仏像は、後世の補修があるものの、最近、創建時からの部分も多いことが分かり、重要文化財から国宝に昇格する可能性が出てきた。植島住職は「寺の南側には宮殿がありました。今は周囲は田畑ですが、掘ればどこでも遺跡が出てきます。ここがまさに首都だったのです」と話す。

 古代の宮殿は、天皇の代替わりごとに移動した。中でも大規模なのが藤原京(橿原市)だ。飛鳥寺からの距離は、直線で北に2キロほどで、訪れた時は一面のコスモス畑になっていた。季節によってさまざまな花が開いて、遺跡を彩る。

 飛鳥寺や藤原京のころ(7世紀)は、おぼろげながら都の様子を知ることができる。だが時代をさかのぼると霧が濃くなる。大和政権発祥の地はどこなのか。有力候補である纒向(まきむく)遺跡(桜井市)にも足を延ばした。

藤原京跡は一面のコスモス畑になっていた=奈良県橿原市で

藤原京跡は一面のコスモス畑になっていた=奈良県橿原市で

 JR桜井線巻向(まきむく)駅のそばに広大な纒向遺跡の一部があり、建物の柱が再現されている。その南には、巨大な前方後円墳「箸墓(はしはか)」がある。中国の歴史書に記述のある卑弥呼の墓ともいわれ、いずれも3世紀のものらしい。邪馬台国の候補地は全国に50カ所以上もあり、纒向もその一つだ。箸墓は樹木が茂った丘で、立ち入りできない。近くの集落から望むと、古代の人が造ったとは思えないような巨大さ。大きな力を持った王が、ここにいたことを実感する。それ以上のことは、文字史料が出土しない今、はっきりしない。

古代の都が置かれた地は、なだらかな山に囲まれた里。甘樫丘からは、遠くに大和三山のうちの畝傍山(左手前)、耳成山(右端)が見える=明日香村で

古代の都が置かれた地は、なだらかな山に囲まれた里。甘樫丘からは、遠くに大和三山のうちの畝傍山(左手前)、耳成山(右端)が見える=明日香村で

 再び明日香村に戻り、県立万葉文化館を訪ねた。人形を使ったり、当時の音を再現したり、万葉の世界を形に表そうとしている。柿本人麻呂、額田王(ぬかたのおおきみ)、志貴皇子(しきのみこ)といった歌人は、このあたりに住んでいたとされ、四季の移り変わりや日々の思いを歌にした。同館の大谷歩主任研究員は「万葉の人々も、今の私たちと同じような喜び、悲しみを感じていました。万葉集が編まれた過程などははっきりとしませんが、ロマンということで何を言っても許される。それがいいところかもしれません」と言う。

 夕暮れどき、明日香村が一望できる標高148メートルの甘樫丘(あまかしのおか)に上った。畝傍(うねび)山と耳成山、天香具山の大和三山が見えた。遠くには葛城、二上(にじょう)などの山々が重なり、近景は稲刈りの進む田園地帯。おだやかで広々とした瑞穂(みずほ)の国の姿だ。

 丘を下り、北へ歩くこと約30分。すっかり日が暮れたところで、薄紫色の花の群れが目に入った。通り掛かりの人に尋ねると、本薬師寺の跡で、小学生たちが植えたホテイアオイの花だという。正面に畝傍山、反対側には名も知らぬ古い塚の上に白い月が昇っていた。どこを歩いても何かしら遺跡にぶつかるのが、飛鳥の面白さだ。

 文・写真 吉田薫

(2019年11月22日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
飛鳥寺、県立万葉文化館へは近鉄橿原神宮前駅から周遊バスで約15分。
東京、名古屋方面からは京都駅で近鉄に乗り換えるのが便利。
藤原宮跡へは近鉄大和八木駅からコミュニティーバスで約20分。
箸墓古墳はJR巻向駅から徒歩約5分。

◆問い合わせ
奈良県観光局観光プロモーション課=電0742(27)8482。
かしはら観光インフォメーションセンター=電0744(27)2070。

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★橿原神宮
日本書紀や古事記に記された初代天皇神武天皇の宮跡とされる地に、明治年間に創建された。
二つの鳥居をくぐり、外拝殿から参拝できる。畝傍山を望む広大な境内は、厳粛な雰囲気に包まれている。
12月8日まで普段非公開の「勅使館」が公開されている。
特別拝観料500円。
電0744(22)3271。

★今井町
近鉄八木西口駅(橿原市)の近く、戦国時代から江戸時代にかけての町並みが残る地域。
豪壮な今西家住宅は、お白州(裁判所)や牢屋(ろうや)も備えた建物。
見学料500円。
景観に配慮した飲食店も増えている。
「うのまち珈琲店」は店主の小田墾(つとむ)さん(32)考案のクリームソーダが人気だ。
町並み案内の拠点は、展示施設も兼ねた今井まちなみ交流センター「華甍(はないらか)」へ。
電0744(24)8719。

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