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【愛知】3・11の経験を基に絵画展 宮城から田原に移住の山本さん

ジャンル・エリア : 展示 | 愛知 | 芸術  2019年03月07日

チャリティー展覧会で販売するグッズを手にする山本さん夫妻=豊橋市曙町南松原の園芸店garageで

チャリティー展覧会で販売するグッズを手にする山本さん夫妻=豊橋市曙町南松原の園芸店garageで

 東日本大震災で被災し田原市に移住した学校職員、山本美貴子さん(41)と、移住後に再婚した夫の画家、拓也さん(47)によるチャリティー展覧会「3.11 HOPE MARKET」が豊橋市曙町南松原の園芸店「garage(ガレージ)」で開かれている。31日まで。

 美貴子さんは震災の発生時、長男と宮城県女川町で2人暮らし。隣の石巻市の職場にいた美貴子さんは近くの高台の神社に避難し、水に囲まれて一晩を明かした。がれきや遺体をかきわけて女川に戻ったのは3日後。美貴子さんは女川へ向かいながら、家族の死を覚悟した。家族は幸いにも無事だったが、「30人の友人を亡くした」。

 1年ほど避難所や仮設住宅を転々とした。しかし、大切な人を亡くした女川で暮らしつづける苦しみが募り、震災翌年の2012年4月に転居。「どこでもよかったけれど、海で育ったから海のない場所での生活が考えられなかった」と田原を選んだ。

 田原市への移住後、女川でテント暮らしだった時にボランティアとして物資を手渡してくれた拓也さんと夏のアートイベントで再会。共通の趣味のサーフィンなどで愛を深め、17年3月11日に入籍した。

 美貴子さんは、被災経験を基に制作した作品を中心に新作の絵画6点を出展。家や車がキャラクターの上にのっている作品は、津波にさらわれた地を表現。月日がたって花が咲いた様子も同時に描き、「津波は憎たらしいけれど、私たちは自然の中で生きてるんだ」との思いを込めた。

 コーヒーを使ってセピア調に仕上げられているのも作品の特長。「故郷では津波とともに古くていいものがなくなってしまったように感じる。セピアに描くのは、古いものへのあこがれかも」と話す。

 会場には過去作のポストカードやポスターも。一方、「シルクスクリーン」と呼ばれる印刷技法を用いたオリジナルデザインのTシャツやトレーナー、かばんやタオルなど、拓也さんの作品も並ぶ。

 2人は「震災は風化しつつあるが、南海トラフ地震だっていつくるか分からない。展覧会をきっかけに、どう逃げるか、どこで落ち合うのかなど、自分たちの防災を家族で話してもらえたらうれしいです」と口をそろえる。

 展覧会は午前10時~午後7時、最終日は午後3時まで。木曜定休。作品を販売し、その売り上げから経費を差し引いた全額を、津波到達地点に石碑を置き後世に伝える女川町の「いのちの石碑プロジェクト」などに寄付する。

 (星野桃代)