ジャンル・エリア : 三重 | 展示 | 歴史 2022年11月01日
平安時代はじめの代表的な6人の歌人「六歌仙」の1人として知られる在原業平(ありわらのなりひら)に迫る特別展「NARIHIRA−いにしへの雅び男のものがたり−」(中日新聞社後援)が、明和町竹川の斎宮歴史博物館で開かれている。斎宮も登場する平安期の歌物語「伊勢物語」の主人公のモデルとされる業平は、どんな人物だったのか。多くの史料で探る。20日まで。
「世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」(もし世の中にまったく桜がなかったら、春を過ごす人の心はどれだけのどかでしょうね)
古典の授業などに登場する有名な和歌の作者、業平は父、母方の祖父がともに天皇という家系に生まれた。容姿が美しかったとされ、主人公の男性が多くの女性と恋をする姿などを描いた「伊勢物語」のモデルとされる。特別展では業平に関係する史料50点を展示している。
史実を紹介するコーナーでは家系図や歴史書の写本などを紹介。業平の死亡記事が載る「日本三代実録」では「体が大きくて美しく奔放で、漢学の才能はなかったが、優れた和歌をよく作った」と評されている。
業平が生きていたころの歴史書からは多くの権力闘争が起こり、業平の父・阿保(あぼ)親王も巻き込まれたことが読み取れる。同館学芸普及課の岸田早苗課長は「業平が和歌をたしなんだのは、そんな時代背景があったからでは」と推測する。
一方、業平は死後、年月がたつにつれ、ひし形模様で水色の着物をまとい、刀や弓を持った武官の姿で描かれることが多くなる。江戸時代に描かれた絵巻物で、伊勢物語の主人公は水色の着物の人物として描かれている。そんなイメージの定着に伴い、業平の絵がよくまとっているひし形の着物の柄は「業平菱(なりひらびし)」と呼ばれるようにもなった。
特別展では伊勢物語の場面を描いたびょうぶ3種も展示。東国に旅に出た男性が道中のカキツバタを見て妻を思う歌を詠む「東下り」、天皇の代理で狩りに来た主人公が斎宮を訪れる「狩の使」などがあり、人物や風景の描かれ方の違いが見て取れる。会場には伊勢物語の一場面などをデザインした硯(すずり)箱なども並んでいる。午前9時半~午後5時開館で月曜休館。特別展の観覧料は一般500円。
(奥村友基)