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【三重】斎王と文学の深いつながり 斎宮歴史博物館で企画展

ジャンル・エリア : 三重 | 展示 | 歴史  2021年03月25日

左上部分に光源氏が野宮を訪れる場面を描いた源氏物語図屏風

左上部分に光源氏が野宮を訪れる場面を描いた源氏物語図屏風

 かつて天皇に代わって伊勢神宮に仕えた皇女「斎王」にゆかりの深い文学作品やその関連資料を集めた展示「斎王ゆかりの古典文学の世界」が、県立斎宮歴史博物館で開かれている。都を離れて暮らした斎王。会場にはその悲恋などを描いた館蔵資料40点が並ぶ。4月11日まで。

 斎王や、その住まいなどがあった「斎宮」は、平安時代の歌物語「伊勢物語」や貴族社会を舞台にした「源氏物語」など、さまざまな文学作品に登場する。会場には、関連する和歌集や美術品などが作品ごとに展示されている。

 伊勢物語の第六十九段「狩の使」には、斎宮を訪れた男と斎王の一夜の逢瀬(おうせ)を描いた場面がある。主人公とされる在原業平は、平安時代の優れた歌人「三十六歌仙」に選ばれており、「三十六歌仙図画帖(がじょう)」(江戸時代)には、青色の男性装束「直衣(のうし)」に、武官であることを示す冠「巻纓冠(けんえいかん)」を身に着けた業平の姿が描かれている。

在原業平の姿が描かれた三十六歌仙図画帖

在原業平の姿が描かれた三十六歌仙図画帖

 源氏物語には、主人公の光源氏の恋人「六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)」の娘であり、斎王を務めた後に入内して中宮になった「秋好(あきこのむ)中宮」と呼ばれる女性が登場。「源氏物語図屏風」(同)の左上の部分には、斎王に選ばれた皇女が心身を清める「潔斎」の場である野宮を、源氏が訪れる場面が描かれている。

 また、三条天皇の斎王であった当子(まさこ)内親王と、貴族の藤原道雅の悲恋などを描いた平安時代の歴史物語「栄花物語」の版本(同)も展示。道雅が当子内親王に贈ったとされ、小倉百人一首にも採歌された「今はただ 思ひ絶えなんとばかりを 人づてならで 言ふよしもがな」という和歌を「百人一首図会」(同)で紹介している。

藤原道雅の和歌が載っている百人一首図会=いずれも明和町の斎宮歴史博物館で

藤原道雅の和歌が載っている百人一首図会=いずれも明和町の斎宮歴史博物館で

 今回の展示では、新型コロナウイルス禍で期間が大幅に短縮された2019年度の館蔵品展の内容に展示作品を加え、さらに説明文を改良したという。学芸員の松田茜さん(26)は「博物館が収集しているコレクションの幅広さを知ってほしい」と来場を呼び掛けている。月曜休館。

 (望月海希)