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【愛知】暑さ忘れる7000の音色 豊田・風鈴寺、短冊に願い込めつり下げ

ジャンル・エリア : 工芸品 | 愛知 | 神社・仏閣  2023年08月09日

涼しげな音を響かせる境内の風鈴=豊田市小渡町で

涼しげな音を響かせる境内の風鈴=豊田市小渡町で

 チリン、チリン-。矢作川の上流にある豊田市小渡町。川沿いの町を風が吹き抜けると、たくさんの風鈴が涼やかな音色を響かせる。「風鈴寺」とも呼ばれる同町の増福寺では、参拝客たちが暑さを忘れる「音のミスト」を浴びている。

 境内の至る所に飾られた風鈴。その数は約7000個に上る。参拝客は寺の釣り鐘を模した南部鉄器の風鈴とともに、願い事を記した短冊をつり下げる。短冊は5色あり、赤は「縁結び」、青は「無病息災」などそれぞれ意味がある。

 風鈴の奉納は、町を活性化させようと、2000年代に始まった。夏には「小渡夢かけ風鈴」と題して町中に風鈴が飾られ、全国各地から観光客が訪れる。前住職の佐藤太貫(たいかん)さん(86)は「風鈴には奉納した人の願いだけでなく、町の願いもかかっている」と打ち明ける。

 奉納を始めた背景には、風鈴の音を悟りの境地にたとえた曹洞宗の開祖、道元禅師の教えもある。住職で佐藤さんの長男、孝明さん(50)は「人生どんな風が吹こうと、風鈴のようにしなやかに生きてほしいとの思いもある」と語る。

 奉納された風鈴は短冊が風で切れるまで、境内につり下げられるという。月末までは寺周辺で「夢かけ風鈴」が催され、ガラス製や陶器製などさまざまな風鈴を楽しめる。人と町の夢を託された風鈴は、今日も心地よさそうに風に揺られている。 (大谷津元)