【本文】

  1. トップ
  2. お出かけニュース
  3. 【京都】御簾越しに…。光源氏気分 紫式部ゆかりの地 京都府宇治市

【京都】御簾越しに…。光源氏気分 紫式部ゆかりの地 京都府宇治市

ジャンル・エリア : 展示 | 文化 | 歴史 | 近畿  2024年01月04日

宇治橋のたもとにある紫式部像=いずれも京都府宇治市で

宇治橋のたもとにある紫式部像=いずれも京都府宇治市で

 「そうだ 京都、行こう」。そう思ったのは、今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」に関連し、旅先の有益な情報を提供したいと思ったからだ。大河ドラマにかこつけて、社内での長時間のデスクワークから逃れようと思ったわけではない。決して。

 遠いようで近い京都。名古屋駅から京都駅まで新幹線で30分。そこからさらに奈良線で30分。着いたのは京都府宇治市。紫式部の代表作「源氏物語」の舞台だ。駅を出ると茶、茶、茶。どこもかしこも緑色の物を売っている。パフェや団子は序の口。「抹茶ギョーザ」や「抹茶たこ焼き」、果ては「抹茶カレーうどん」もある。茶にあらずんば食べ物にあらず。そんな勢いすら感じる。

 無難に抹茶ソフトクリームをほおばり向かったのは、「10円玉」でおなじみの世界遺産・平等院。元々は紫式部が仕えた藤原道長の別荘だったが、子の頼通が寺院に改めた。屋根を鳳凰(ほうおう)で飾った左右対称の寺院が水面に映る庭園は、藤原家の繁栄をしのばせる。その荘厳な風景が10円玉にデザインされているのは、なんだか不釣り合いに思えてくる。

 そこから歩いて10分。「宇治市源氏物語ミュージアム」。案内してくれたのは学芸員の坪内淳仁さん(50)。愛知県津島市出身。同市や一宮市でも学芸員を務めていたという。あいさつするや否や、かつて取材対応で出会った中日新聞の先輩記者たちの名前を挙げた。油断していた私の背筋が自然と伸びる。

宇治市源氏物語ミュージアムを案内する坪内淳仁さん。物語の内容を視覚的に体感できる

宇治市源氏物語ミュージアムを案内する坪内淳仁さん。物語の内容を視覚的に体感できる

 2018年にリニューアルした同館は、源氏物語の内容を視覚的に体感できる。源氏物語は平安京を舞台にした1、2部と宇治を舞台にした3部(宇治十帖(じゅうじょう))がある。館内も主に「平安の間」と「宇治の間」の2部屋がある。展示のほか、両部屋で流れる計約15分の映像を見れば、未読者でもざっくりとあらすじを理解できるのがうれしい。

 「中高生の頃、源氏物語がよく分からず苦手意識を持っていた大人に親しんでもらえたら」。そう語る坪内さん。「垣間見」というコーナーは、光源氏が御簾(みす)越しに女性の姿をのぞき見る重要シーンを疑似体験できる。平安時代は女性がむやみに素顔を見せてはいけない時代。ちらりと御簾越しに見えた女性の姿に、多くの平安貴族が心をときめかせたに違いない。

 帰り道。日本三古橋の一つである宇治橋のたもとには、紫式部の石像がある。橋から豊かな木々、きらめく宇治川を望む。平安貴族もこの山紫水明に心が揺れたのだろうか。恋も、自然も。いつの世も変わらないものが、この地に根付いている。 (鎌倉優太)

 ▼ガイド 平等院はJR宇治駅から徒歩10分。大人600円、中高生400円、小学生300円、未就学児無料。年中無休。拝観は午前8時半~午後5時半。(電)0774(21)2861。宇治市源氏物語ミュージアムはJR宇治駅から徒歩15分。高校生以上600円、小中学生300円、未就学児無料。月曜(祝日の場合はその翌日)休館。午前9時~午後5時。(電)0774(39)9300

(中日新聞夕刊 2024年1月4日掲載)