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【長野】菱田春草の魅力伝えた18年 退任の飯田市美術博物館・滝沢館長、30日から記念展

ジャンル・エリア : 展示 | 文化 | 甲信越 | 芸術  2024年03月19日

退任を機に寄贈した作品「地のものたち」と滝沢さん=飯田市美術博物館で

退任を機に寄贈した作品「地のものたち」と滝沢さん=飯田市美術博物館で

 飯田市美術博物館の館長を18年間務めた滝沢具幸さん(82)=武蔵野美術大名誉教授=が3月末で退任する。長年地域の芸術活動を支えてきた立場を離れ、再び自身の創作活動に力を注ぐ。

 滝沢さんは下久堅村(現飯田市下久堅)出身。飯田高校卒業後、東京芸術大に進学し、日本画家の吉岡堅二(1906―90)に師事した。伝統的な日本画に、50年代にフランスを中心に展開された抽象表現アンフォルメルの技法を取り入れ、山種美術館日本画大賞展優秀賞やMOA美術館岡田茂吉賞絵画部門大賞などを受賞。87~2011年には、武蔵野美術大で教壇に立った。

 下久堅から見る天竜川や風越山を描いてきた幼少期の滝沢さんに刺激を与えたのは、同郷の日本画家菱田春草(1874~1911)。市内で開かれた春草の展示会で雑木林に伸びる木々を描いた「秋木立」を目にし、「自分の地元の周りとそう変わらない景色をこんなふうに描くのか」と衝撃を受けた。2006年、春草の顕彰を目的の一つに建てられた同館の2代目の館長に打診され、「自分が生まれた土地だから力になれたら。春草の存在を伝え残そう」と応じた。

 就任後は東京を拠点にしながら月に1~2回の頻度で飯田を訪れ、同館で市民を相手に講演や日本画講座を開いてきた。多くの地元の美術愛好家に出会い「さすがは天才春草が生まれた土地だと感じた」と語る。

 18年がたち、「もう長くやったので、新しい風を入れた方がいい」と退任を申し出た。ただ、創作への意欲は衰えない。引き続き東京を中心に、飯田のアトリエでも作品づくりに励む予定だ。「生きているうちは仕事を続けるよ。描きたいものはまだまだ自然に生まれてくるんだ。もっと良い絵を」と力強く語る。

 同館では退任を記念し、30日から5月26日まで「滝沢具幸展」が開かれる。滝沢さんの作品30点余りを展示。3月31日には滝沢さんの講演もある。

 4月からは同市出身で常葉大造形学部教授の蜂谷充志さんが館長に就任する。

 (長崎光希)