鳥羽の離島めぐり~夏の島旅②~答志島・神島編(三重県鳥羽市)
2022年9月15日
坂手島と菅島歩きを終え、答志島、神島へ。この2島へは何度も行っているが、何度行っても島歩きは飽きない。島の自然、漁村・漁港の風景、島の人々の暮らしが見える島ならではの島旅気分。それを味わいたくて何度も島へ渡る。
答志島の和具港に着いたのは夕暮れだった。港から宿までは歩いて10分くらい。宿の若旦那からは「お迎えに行きますよ」と言っていただいていたがお断りした。せっかくの島時間、島の夕景を暮れ行くまで見ていたい。島旅での夕暮れはひとつのクライマックス。「もう帰るよ」とどこへ行くのか飛んでいく鳥たち。朝の出漁を待つ漁船たち。人の気配もなく、波音もなく、ひとり静かな夕暮れ。
見上げると三日月がほほ笑んでいた。島のマジックアワーの空が藍色に変わっていく。島と海に月は相応しい。いつもまちなかで見ている月とは違う。月がのんびり島を眺めているように見える。
翌朝、日の出前に宿を出た。島で迎える夜明けも好きだ。夕景も朝景も、どちらもとても大切な時間。宿で借りた自転車漕いで、若旦那に教えてもらった神島が見えるスポットに向かった。タイミングよく、お日様が神島の向こうから昇ってくる。
夜明けとともに、漁船たちが漁に出ていく。朝日が昇る神島の風景は、まさに神がかっている。
夜が明けた後、朝食までの時間に、島の路地を歩いた。答志島の魅力はここにもある。狭い路地にあふれる生活感、どの家にも書かれている「丸八」の文字、無造作におかれたじんじろ車。
鳥羽の離島では唯一であろうトンネルを抜け、浜辺まで自転車を走らせ、くつろぎの宿「美さき」に戻る。
朝食をいただき、神島行きの船の時間まではワーケーション。神島を借景にした部屋のワークデスクはリラックス感を与えてくれる。ワーケーションって、本来、こういうことを言うのだろうなと思いながら。
答志島から神島へは定期船で20分。せっかく鳥羽の離島に行くなら、併せて神島へも行きたい。穏やかな伊勢湾を渡り、何度目かの神島に着いた。何か心を晴らしたい時には、神島へ行く。リラックスとデトックス。神島へ行く理由はそこにある。何もかも純粋な神島をぐるり一周するだけで、心は洗われる。
神島巡りは、いつも時計回り。神社の石段を昇り、山道を抜けると対岸に渥美半島が見えてくる。三重県と愛知県の県境。大型船の通り道でもある伊良湖水道を挟んだ神島と伊良湖岬の風景はまさに絶景だ。
神島の灯台、三島由紀夫の小説「潮騒」のクライマックスシーンで知られる監的哨跡を抜け、神島のグレート・ネイチャー「カルスト地形」へ。東屋で少し休憩して、ラストの島めぐり。春や秋ならばなんてことない島一周だが、気温35℃の真夏はさすがに厳しい。けれども、汗をかき切ったからこそのデトックス感はある。
時計台のところに出来た新しい食堂「やま海」で昼ご飯。出していただいた麦茶を何杯飲んだだろう。水分補給に徐々に体は戻っていき、真夏の神島を制覇した充実感に浸る。
神島へはまた行くだろう。何度行っても味わえるこのリラックス&デトックス感。歩くところはいつもと変わらない一緒の道だ。風景も変わらない。けど、それでいい。それがいい。
■鳥羽の離島へようこそ(鳥羽市)
https://www.city.toba.mie.jp/soshiki/kikaku_keiei/gyomu/seisaku_keikaku/rito_shinko/3053.html
■鳥羽市定期船ダイヤ
https://www.city.toba.mie.jp/soshiki/t_kanri/gyomu/doro_kotsu/kokyo_kotsu/3151.html
- 田中 三文 (たなか みつふみ)
愛知県豊橋市生まれ。
出版社勤務を経て、現在は三菱UFJリサーチ&コンサルティング 政策研究事業本部 上席主任研究員。
愛知大学地域政策学部非常勤講師(観光まちづくり論)
地域を盛り上げる観光事業や集客計画など、手がけてきたプロジェクトは数知れず。
2012年より2014年まで昇龍道プロジェクト推進協議会・台湾香港部会長を務め、
同エリアのインバウンド促進計画や外国人受入環境整備などにも力を注いでいる。
旅と写真とロックを愛する仕事人で、公私ともに、さすらいの旅人として各地を巡っている。
日本の真ん中に位置する中部北陸地域の形は、能登半島が龍の頭の形に、三重県が龍の尾に似ており、龍の体が隈無く中部北陸9県を昇っていく様子を思い起こされることから同地域の観光エリアを「昇龍道」と呼んでいます。
この地域には日本の魅力が凝縮されており、中部北陸9県が官民一体となって海外からの観光客誘致を促進する「昇龍道プロジェクト」も好調です。このブログでは、「昇龍道」の四季折々の姿を写真と文章で紹介していきます。
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