2020年07月20日
タイの寺院の壁画や彫像には猿神を扱う作品が多い。孫悟空や桃太郎にもつながるとされるヒンズー叙事詩が起源だ。その猿神をシンボルに祭る街でサルが大暴れしたというニュースを聞いて、バンコクの北150キロの街ロッブリーに行った。
街の中心部にすみ着いたサルは1000匹とも。貴重な観光資源だが、新型コロナウイルスのあおりで旅行者が激減し、もらえる餌も減った。そこで、わずかなバナナの奪い合いだという。
この目で見たサルは、わが物顔で歩き回っていた。痩せ細ったり、気が立っていたりする様子もない。「地元の人たちが餌を与えるから飢えることはないよ」。食堂の店員はコロナ禍説を一蹴したが、「毎日バスが3台来ていたけど今はゼロ。腹をすかしてけんかにもなるさ」という街の人も。ニュースの真偽ははっきりしなかったが、餌売りの女性は明らかに気落ちしていた。「サルよりも、収入がなくなった私の方が大変なことは確かね」
11月に、腹いっぱいの餌を振る舞うビュッフェ祭りがあるという。「そのころには街の人々もサルも笑顔で」と、再訪を誓った。 (岩崎健太朗)