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コラム 花紀行

愛知県東海市「太田川駅東歩道(ランの道)」のラン

愛知県東海市「太田川駅東歩道(ランの道)」のラン

今月(2023年5月)の名古屋は、
1日の最高気温が25℃を超える夏日が多く、
同じく30℃を超える真夏日を20日までに2回も観測。
暑い5月となっています。

そこで、
開花期に幅のある花を求めて、
愛知県東海市の「ランの道」(太田川駅東歩道)へ行ってきました。

同市は洋ランの生産が盛んで、
農林水産省の統計では、
洋ランの出荷量全国1位の愛知県の
5分の1強の出荷量を東海市が担っているとのこと。

毎年1月の第4土日に「東海フラワーショウ」を開催し、
ランの展示即売も行っているそうです。

↑太田川駅東口。
特急も停車する駅で、
バスターミナルやロータリーのほか、
パスポートセンターや交番、商業施設もあります。

↑駅前広場(東)案内図。
広場の両脇には様々な草木が植えられ、
緑豊かで散策が楽しいエリアとなっています。

ここから東へ延びる歩道約600メートルは「ランの道」と名付けられ、
12種類(品種は多数)のランが約6000株植栽されているそうです。

花の見ごろは4月から6月と幅がありますが、
エビネ系は比較的早く(4月ごろ)、
フウランは遅め(6月ごろ)とのこと。

駅前広場の両脇でも、
エビネやセッコク系のランたちを見ることができますが、
「ランの道」の本領は、車道を渡った東側にあります。

↑車道を渡ってすぐの「ランの道」。
色とりどりのランの花たちが咲き乱れていました。

↑少し近付いてみたところ。

↑「ガーデンシンビジウム」4種。
花の色は多様ですが、
全体的に花の形が丸っこく、
穂のようにたくさんの花を付けるのが特徴のようです。

↑オンシジウム(左)とデンドロビウム(右=セッコク系)。

↑ミニカトレア2種。

↑名札がなかったので花の付き方からの推測ですが、
左がガーデンシンビジウム、右がミニカトレアかな。

高嶺の花のイメージがあるランの花たちが
歩道沿いのそこかしこで咲いている
不思議な空間です。

ふと視線を上げると…。

↑樹上にくくり付けられたセッコク系のランたち。

↑セッコク系のラン4種。

セッコクは樹上や岩石に着床する東アジア原産のラン。

セッコク属の学名をデンドロビウムというそうで、
こちらの名称でなじみのある人もいらっしゃると思います。

本来の花色は白から淡紅色とのことですが、
交配種が数多く作り出されており、
園芸品種は色も多様です。

↑両側に数々のシランが咲いているエリア。
「ランの道」の約半分はシランの道といっていいほど、
多品種のシランが植わっています。

案内看板によると、
シランは日本から東アジアにかけての地域が原産地。
「紫の花が咲くラン」の意味で名付けられたとのことですが、
ここでは「ランの道」を監修された市橋正一氏(愛知教育大学名誉教授)
が改良された品種を中心に、約20品種のシランを見ることができます。

↑珍しい白いシランや、ピンクっぽいシランも。

↑「ランの道」沿いの大田町内会掲示板に掲出されていた
「市橋正一氏  シラン(紫蘭)Collection」。

こうして一覧になっている写真を見比べると、
どこがどう違うのかがわかりやすく、
改めて品種改良のこだわりについて
推し量るきっかけになりました。

シランの開花期は5月ごろとのことですが、
開花時期の遅い品種もあり、
長く楽しめるようになっているそうです。

↑中国原産の野生種3種。
左から
四川小白笈(しせんしょうはっきゅう)、
四川黄花小白笈(しせんきばなしょうはっきゅう)、
雲南小白笈(うんなんしょうはっきゅう)。

以下は、
市橋氏が改良した品種で、
名札で名前が確認できたものを紹介します。

↑左上から時計回りに
えりか、さえ、あやの、えりな。

↑左上から時計回りに
ゆり、ゆうこ、りすみ、ひろこ。

↑左上から時計回りに
みきこ、たえみ、さくら、きょうこ。

↑左上から時計回りに
みちこ、しおり、まこ、りょうこ。

各品種には、
研究に協力してくれた学生さんたちの名前を付けたそうです。

↑「ランの道」沿いには、山車蔵や寺、喫茶店があり、
ランの華やかさだけでなく、
地域に根付いた伝統や落ち着いた雰囲気が感じられます。

「ランの道」ではありますが、
ラン以外にも様々な花や美しい実に出合うことができました。

↑左上から時計回りに
ビヨウヤナギ、ヒルザキツキミソウ、ザクロ(一重咲き)、ザクロ(八重咲き)
(いずれも推定)。

↑アジサイたちも花盛り。

↑道沿いに設置されたベンチはクリスマスローズに彩られていました。
花は既に終わっており、
花びらのように見えるガクの中心には結実が見られました。

↑こちらは実たちです。
左上から時計回りに
カリン、ロウバイ、サクラ、ユスラウメ(いずれも推定)。

「実りの~」といえば「秋」と続きますが、
初夏に実がなる木も結構あるものだと実感。

ほかにも、
ツバキやサルスベリ、ハギといった美しい花の咲く木々が点在し、
四季を通して楽しめそうです。

梅雨どきにきれいな花を咲かせる
アガパンサス(別名:君子蘭=ヒガンバナ科)
のつぼみも何カ所かで見かけたので、
しばらくしたら、あでやかな花姿で
さらなる彩りを添えてくれることでしょう。

太田川駅周辺の区画整理をきっかけに、
2017年度から開始された「ランの道」は、
地元のまちづくりの会「蘭の道グループ」によって
ボランティアで管理されているそうです。

また2020年からは毎年、
市民植栽会も催されているとのこと。

今年の植栽会は、
5月20日にウォーキングイベントと共催し、
フウラン200株、セッコク系200株、シンビジウム100株を植えたそうです。

地元の人々の温かな手と目で守られ、
どんどん華やかになっていく「ランの道」。
今後の成長が楽しみです。

感染症には十分気をつけて、
四季のある日本ならではの旬の花を楽しみましょう。

取材日:2023年5月20日

DATA

太田川駅東歩道

愛知県東海市大田町
TEL:052-603-2211(東海市役所・花と緑の推進課)
※入場自由。

交通アクセス

○公共交通機関
名鉄常滑線または河和線「太田川駅」東口から徒歩すぐ。
○車
名古屋高速4号東海線・東海新宝出入口から国道247号経由で南西へ約5キロ。
※太田川駅東公共駐車場は入庫から30分まで無料(30分を超えるごとに100円ずつ加算、24時間までの上限は1000円)。

取材担当プロフィール

まころーど
名古屋生まれ、名古屋育ち。
季節の移り変わりを観察するのが大好きなアラフィフ世代。新聞記事制作や、出版社にてガイド本等の制作経験あり。
現在は、旅や町ネタに関する記事を執筆しています。観光や販促のお手伝いも。