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中国・黄山 名山の旅雨のち晴れ

2017年04月14日

 中国一の名山といわれる安徽省の黄山を訪れた。北京から高速鉄道に乗ったが、終点の黄山北駅に着き、キャリーバッグを置き忘れて下車してしまった。気付いたとき、列車は既に出発。駅員に連絡先だけ伝え、気落ちしつつ黄山へ向かった。

 「五岳(中国の5つの聖山)に行けば、他の山は見る必要はない。黄山に行けば、五岳も見る必要がない」と古くからいわれる天下一の名山。だが、麓に着くと、あいにくの雨。絶景は拝めそうにない。

 「踏んだり蹴ったりだ」。嘆きながらロープウエーで頂上に登ると、ちょうど雨がやんだ。連なる峰の周りに綿雲がじゅうたんのように広がり、山水画の世界そのままの雲海が眼前に広がった。巨岩の裂け目に根を生やした大松にも圧倒された。「自然こそが最高の芸術家なんだ」。ひたすら感動した。

 翌日、ホテルを出る時に携帯が鳴った。黄山北駅の女性駅員からで「バッグが北京南駅で見つかりましたよ」。1000キロ以上離れた北京まで盗まれなかったことに驚き、駅員間の確実な連絡にも頭が下がった。振り返ってみると、いいことずくめの旅だった。 (平岩勇司)