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カイロ 市民のメディア不信

2020年01月30日

 「今度のデモは大きくなりそうか」。何人かのエジプト人に同じ質問を受けた。先月27日にシシ大統領の退陣を求める反政府デモが予想されていたからだ。「大丈夫だと思うよ」と答えると、ホッとした様子。なぜ外国人に尋ねるのか不思議だったが、その理由が分かった。

 当日、首都カイロ中心部は各所で通行止めの厳戒態勢。当局は海外メディアへの忠告に余念がなかった。記者に届いたメールでは、デモ取材を容認する姿勢を見せる半面、「自ら見たものだけを公開すべきだ。情報は、2つ以上の信頼できる筋によって確認する必要がある」と取材方法まで指南してきた。

 そんな中でエジプトと対立するカタールの衛星放送アルジャジーラは、ツイッターに投稿された数十秒のデモの映像を繰り返し、あたかも拡大しているかのように放送した。一方、厳しい言論統制下に置かれる地元メディアは、政権支持者が開いた集会の様子ばかりを伝えた。

 結局、大規模デモはなかったが、市民はどちらのメディアも疑念を交えて見ていた。信頼できるメディアの不在ほど、国民にとって悲しいことはないと感じた。 (奥田哲平)