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パリ 交通ストを喜ぶのは…

2020年05月12日

「ピックポケット(すりだ)!」

 乗客がすし詰め状態の地下鉄車両内で思わず声を上げた。先日、家族旅行でパリを訪れた時だ。長女が着たコートの裾から、中東系の少女が手を突っ込んだ。狙いは内側で背負ったバッグ。長女はコートの上から少女の手をたたいた。私が叫んだ後、少女は近くにいた黒人男性に肩をつかまれ、無言でうなだれていた。

 政府の退職年金改革への反発で、パリの交通機関では、大規模ストが続いていた。地下鉄は大幅減便で運行中の列車には乗客が殺到。車両内もホーム上も押し合いへし合いで散々だったが、すりには喜ばしい環境だ。乗車中、被害に気付いてポケット内を何度も確認する乗客をたびたび目にした。

 私は昨夏にスペインで被害に遭った経験や現地の同僚の忠告で、対策を整えて事なきを得た。ただ、大混雑とすりへの警戒で、観光客で埋まった車両内は、いら立ちと疲労感に満ちていた。ストは権利だし、観光シーズンの実行は効果的かもしれない。だが、世界的な観光都市だけに、やはり時季を考えてほしかったとも感じた。 (藤沢有哉)

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