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ワシントン 平和こそ最高の価値

2022年02月01日

 退役軍人行事に出席するため西部カリフォルニア州の自宅から首都ワシントンのホテルを訪れたミッキー・ガニッチさん=102歳=を取材した。今年で80年を迎えた日本による真珠湾攻撃を海軍兵として22歳で経験。全米でも数少なくなった生き残りの1人だ。

 もちろん話の中心は九死に一生を得た真珠湾攻撃当日だったが、ガニッチさんは以後の体験の数々も話してくれた。

 終戦直前の沖縄では、所属する戦艦「ペンシルベニア」に旧日本軍の魚雷が命中し、またも仲間の命を失った。戦後、ビキニ環礁であった核実験では、破壊力の検証用に供出された同艦とともに現地に向かい、遠方から爆発を目撃。朝鮮戦争にも従軍し、物資輸送のために現地や日本を行き来したという。

 それだけに、穏やかな口調ながら「平和こそ最高の価値だ」と語る言葉は重かった。今も紛争が絶えない世界で、かつて戦火を交えた米国と日本はその記憶と経験をどう受け継いでいけるだろうか。

 「さようなら」。別れ際、ガニッチさんは戦時に少しだけ覚えたという日本語で静かに見送ってくれた。 (杉藤貴浩)