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【静岡】「昭和レトロ」人気  東海大・海洋科学博物館 無料で再開

ジャンル・エリア : 展示 | 文化 | 水族館 | | 生き物 | 静岡  2023年06月22日

東海大の海洋科学博物館の外観

東海大の海洋科学博物館の外観

 設備老朽化に伴い3月末で営業を終了した東海大の海洋科学博物館(静岡市清水区三保)が、無料で一般客の入館を再開している。利用客の惜しむ声を受け、5月4日から完全予約制で復活。1カ月半がたち「昭和レトロでどこか懐かしい水族館」と評判で、週末は1日500人の定員が埋まる日もある。 (飯盛結衣)

 5月の大型連休が明けて1週間たった日曜日。博物館の目玉である大型の海洋水槽前には多くの親子連れの姿があった。高さ6メートル、縦横ともに10メートルの水槽は、開館した1970年当初では国内最大で「東洋一」とも評された。サメの1種シロワニやエイ、アジなど約50種1000匹を展示する水槽は四方の側面から見られるほか、底面を地下階から見上げることができる。

 学芸員の青木聡史さんは「当時最先端の水槽。今は幅広い水槽で正面から観覧するスタイルが主流なので、昭和っぽさが味わえる」と語る。

 夫と孫2人で訪れた女性(65)=静岡市駿河区=にとっても、子どもたちとの思い出が詰まった博物館。「ジンベエザメがいる沖縄の美ら海水族館や大阪の海遊館のような派手さはないけれど、『ザ・昭和』の雰囲気で落ち着く」とほほ笑む。

「汽車窓式」「ドーム状」水槽

 駿河湾の生き物を紹介するコーナーでは、25の水槽があり、沖合から深海へと展示が進む。水槽を列車の窓のように横1列に並べた「汽車窓式展示」で、開館当初の昭和の面影がそのまま残る。

 
目玉の大型水槽にはサメの1種シロワニやエイ、アジなどが見られる

目玉の大型水槽にはサメの1種シロワニやエイ、アジなどが見られる

 博物館が77年、世界で初めて繁殖に成功したカクレクマノミの飼育、繁殖も続ける。ドーム状の水槽は来館者が下に潜り込め、まるで水槽の中にいるような写真が撮れる。家族4人で訪れた女性(33)=清水区=は「(クマノミの飼育スペースなど)コロナ禍で立ち入り制限されていたスペースも再開され、子どもたちもうれしそう」と笑顔を見せた。

 6月は木曜から日曜日まで開館しており、7月20日から9月3日までは休みなく開館する。設備の老朽化で、急きょ展示を中止する可能性があることから、入館料を無料にしている。入館には博物館のホームページから事前予約が必要となる。午前10時(最終入館11時半)~正午、午後1~4時(同3時半)のうち、1時間ごとに100人の枠を設けている。問い合わせは博物館=電054(334)2385=へ。

 
ドーナツ状のクマノミ水槽を楽しむ親子連れ=いずれも静岡市清水区三保で

ドーナツ状のクマノミ水槽を楽しむ親子連れ=いずれも静岡市清水区三保で

市計画は「新施設のバックヤード」

 静岡市内の水族館施設を巡っては、市が東海大と2020年に連携協定を結び、水族館と研究拠点を併設した「海洋文化施設」の整備を清水港で進めている。完成は26年4月。市が169億円をかけて建設し、東海大は飼育や展示のノウハウを提供する。ただ、4月の市長選で初当選した難波喬司市長は展示を見直す方針で、市は契約事業者と交渉に入っている。

 昨年11月に市が発表した施設案では「駿河湾」をテーマに、国内有数の水量1700トンの大型水槽にシュモクザメなどを展示する計画だった。難波市長は「前市長時代に契約した案件。契約自体は尊重しつつ、結果として全体の費用を減らしたい」と説明。市によると、今ある東海大の海洋科学博物館は、新整備する海洋文化施設の「バックヤード機能」を担うこととし、稚魚やデリケートなケアが必要な生物を飼育していくという。

 

 博物館の入館者からは、巨額費をかけての新たな施設整備に「こちらを改修してほしい」「県内に水族館はたくさんある。子育てや福祉に予算を回して」などの声も聞かれた。こうした意見に対して市側は「東海大の博物館はあくまで民間の施設。公共が改修することは考えていない」との姿勢。新施設の立地についても「清水港は駿河湾が目前にあり、国際クルーズ船の玄関口として新たなシンボルになる」と話す。