ジャンル・エリア : まつり | グルメ | 岐阜 2023年09月28日
銘酒「元文」に魅せられて岐阜県郡上市の白鳥町に来ています。今月21日に続いてのご報告です。
その折もお伝えした通り、今回はレンタカーを利用しています。読者の皆さま方からいただく声で「車でなくても行けるところを紹介して」というご要望が多いため、毎回できるだけ電車やバスの旅をご提案していますが、今回はちょっと難しいのです。その理由は、後ほどご説明。
さて「元文」の蔵元である「布屋 原酒造場」や、長滝白山神社などを巡っていると次第に日が暮れてきました。
晩ごはんは「ピッツェリア ゴンザ」で。昨年開かれたピザのコンクールで日本一になった山下恭平さんのお店。自家製の鹿のソーセージと、郡上野菜のピザをお願いしてみました。
郡上の野菜は、日中と夜の気温差が大きいため、とてもおいしく育ちます。長野県の野菜がおいしいのと同じ理屈ですね。そのおいしい野菜をふんだんにのせたピザ、このお店ごとおみやげに持ち帰りたいほどです。ああビールが飲みたいけれど我慢、我慢。
おいしくいただいた後は、長良川鉄道の美濃白鳥駅前へ行きましょう。今日はここが「白鳥おどり」の会場です。わずか20キロほど離れただけの同じ郡上市の八幡町の「郡上おどり」が、ゆったりとした優雅な踊りが多いのに比べ、より力強くエネルギッシュな踊りが特徴なのだとか。
午後8時。いよいよ踊りが始まりました。
この日は毎年一晩だけ開催される「コスプレナイト」。サルのお面を着けた人たちや女子学生に扮(ふん)したおじさまが自然体で踊ります。白山信仰の名残を留めるという踊りと現代ならではの「コスプレ」という風俗の混在が楽しく、つい見とれます。
同行した妻は、バレエなど踊り全般が好きなのですが、白鳥おどりのキモは何よりも「足さばきにある」と分析をしておりました。
「若いお父さんが子どもに踊りを教えようとしていて、まずは足の動かし方を覚えるように、自分で踊ってみせているの」。うーん、私は気がつきませんでした。もう一つ妻が申しますには「若い人が喜々として踊っているね」。
本当だ。「けっ、なーにが盆踊りだ」なんて斜に構えていそうな年代の男の子たちも実に楽しそうに踊っていて、こんな光景、よそのまちではかなり珍しい気もします。
踊りは次第にヒートアップして、夜の街中に下駄(げた)の音が響き渡ります。気がつけば、長良川鉄道の終電はもう出てしまっていて、それで今回はレンタカーにしたのでした。
もうすぐ午後10時。今夜の踊りはそろそろ終わります。またいつか来るその日まで、この光景を目と心にしっかり焼き付けておかなくては。
カメラを操る私のすぐ脇を時にゆったり、時には激しく踊り抜けていく人たちの放つエネルギーを体で感じつつ、歴史ある白鳥のまちをずっと眺めていました。(三品信)
▼ガイド 「ピッツェリア ゴンザ」は、美濃白鳥駅から歩いて10分ほど。月曜と火曜定休です。(電)0575(82)5707。この日は鹿のソーセージと郡上野菜のピザ(1900円)のほか、レバーの窯(かま)焼き(650円)、グリーンサラダ(800円)などもいただきました。「白鳥おどり」のこの夏の日程はあいにく終了しました。来年をどうかお楽しみになさってください。詳細は白鳥観光協会のホームページで。
(中日新聞夕刊 2023年9月28日掲載)