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【石川】スペイン料理店 愛され続け40年 カサ・デ・リブ・カナザワ

ジャンル・エリア : グルメ | 石川  2019年12月10日

40年の月日を振り返る、松田登さん(右から2人目)と千鶴子さん(同3人目)ら=金沢市柿木畠で

40年の月日を振り返る、松田登さん(右から2人目)と千鶴子さん(同3人目)ら=金沢市柿木畠で

県内の草分け 味に妥協なし

 味も、食材も、手間も、一切妥協を許さない。金沢市柿木畠のスペイン料理店「カサ・デ・リブ・カナザワ」が、11月で開業40周年を迎えた。まだ洋食店が少なかった1979年に開業。地中海の本場の味で金沢の美食家たちをとりこにした。「いいものを皆さまに届けたいという思いで、バター一つにもこだわってきた」。40年変わらない味で、客に愛され続けている。(堀井聡子)

 午後5時からの営業に間に合わせるため、正午に仕込みを始める。オーナーシェフの松田登さん(70)は、魚介のスープとオリーブオイルを入れた大鍋を抱え、ぐるぐる回す。「乳化させるため、これを2時間くらいやる」と手間を惜しまない。「頑固な職人でしょ」と妻の千鶴子さん(65)は言った。

 元サラリーマン。だが、大学時代に休学してソロモン諸島で1年間過ごした。探検部員として国内の山々を踏破した登さんにとって、会社員生活はなじむはずもなく1年で退社。そこで東京の知人に誘われたのが、まだ珍しかった本格的なスペイン料理店の仕事だった。手先が器用で、探検部時代は食材を現地調達しながら野外で料理するのが好きだった登さん。おおらかな地中海の料理にのめり込んだ。30歳で金沢に戻り、独立した。

 県内でも先駆けてオープンしたスペイン料理店は、新しいもの好きな金沢の人たちに受け入れられた。開業から2年後、千鶴子さんと結婚。新婚旅行はもちろんスペイン。登さんは「それまで行ったことがなくて。本場の味を確かめに行ったら、うちの店と同じ味で安心した」と笑って振り返る。

 常連の中には家族3世代で通う人も。誕生日やクリスマスなど、いろんな機会に足を運んでくれた。「店でプロポーズした人もいますよ」と千鶴子さん。店で修業した弟子は市内だけでなく、東京や青森にも。11月の周年記念には、常連や弟子から贈られた花の鉢植えが店の階段を埋めた。

 開業から40年。「簡単だったね」と登さんが言えば、「全然簡単じゃなかった。いろんなことがあったでしょ」と苦笑する千鶴子さん。2人は「これからもおいしいものを作って、やれるだけやりたい」と話す。