蔵と運河と赤レンガ建物の半田・散歩道
2015年12月15日
名鉄河和線の急行電車で住吉町駅に着いた。
駅のホームでは「半田赤レンガ建物へようこそ」の看板が迎えてくれた。
駅から目的地の赤レンガ建物(旧カブトビール工場)までは徒歩数分。
ぶらり散歩にはちょうどいい。
かつて明治時代に操業を開始し、全国4大ビールメーカーに地方から挑んだカブトビールの工場は、
昭和16年に工場は閉鎖されたものの、建物自体は第二次大戦時には攻撃を受けながらも生き抜き、今に残された。
住宅街の中にその威容は現れる。
建物の中身は一般公開向けに資料館、飲食・物販施設へと改装されたが、
その威風堂々の外観は往時の稼働時の工場の姿そのままだ。
戦時中の砲弾跡の姿も生々しく残されて、歴史的な生きる教科書にもなっている。
中身は変われど、そのままの建物が残されることに価値がある。
そして、残された産業文化遺産が市民の誇りとなり、愛され続ける。
半田には、醸造文化の蔵と運河が残されており、その町の雰囲気には情緒感がある。
町歩きするには、程よい具合に点在する貴重な産業資源や文化資源は、その情緒感をつなぐ。
半田赤レンガ建物の前辺りからは江戸時代に交通の要所として栄えた紺屋海道がある。
住宅街に変貌しているものの当時の常夜灯や、かつて路地の面影は残されている。
10分ほど歩き、紺屋海道を抜けると運河沿いに辿り着く。
現業として半田の産業を支える酒、酢の醸造業の工場や蔵の姿が続く。
国盛のブランドで知られる中埜酒造、酢の生産量日本一を誇るミツカン。
まさに蔵と運河の町の半田らしい風景だ。
ミツカンは旧博物館を全面リニューアルし、ミツカンミュージアム(MIM)を11月に開業した。
外観は蔵のイメージが残され、蔵と運河の町のイメージは変わることはない。
半田運河は北海道の小樽運河、宮崎県の堀川運河とともに日本三大運河として提唱されているように
日本を代表する運河としてその姿を残している。
名鉄住吉町駅から、のんびり歩いて1時間、最後は名鉄知多半田駅へ。
郵便ポストの上に、半田出身・新美南吉の「ごんぎつね」。
半田で忘れてはならないごんぎつねにお別れして半田の散歩を終えた。
- 田中 三文 (たなか みつふみ)
愛知県豊橋市生まれ。
出版社勤務を経て、現在は三菱UFJリサーチ&コンサルティング 政策研究事業本部 上席主任研究員。
愛知大学地域政策学部非常勤講師(観光まちづくり論)
地域を盛り上げる観光事業や集客計画など、手がけてきたプロジェクトは数知れず。
2012年より2014年まで昇龍道プロジェクト推進協議会・台湾香港部会長を務め、
同エリアのインバウンド促進計画や外国人受入環境整備などにも力を注いでいる。
旅と写真とロックを愛する仕事人で、公私ともに、さすらいの旅人として各地を巡っている。
日本の真ん中に位置する中部北陸地域の形は、能登半島が龍の頭の形に、三重県が龍の尾に似ており、龍の体が隈無く中部北陸9県を昇っていく様子を思い起こされることから同地域の観光エリアを「昇龍道」と呼んでいます。
この地域には日本の魅力が凝縮されており、中部北陸9県が官民一体となって海外からの観光客誘致を促進する「昇龍道プロジェクト」も好調です。このブログでは、「昇龍道」の四季折々の姿を写真と文章で紹介していきます。
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