平日2部制の寿司屋で充実の120分なのだ
2021年3月26日
北海道の場合、寿司といえば豪快に近海の新鮮な魚介類をどうだといわんがばかりに握る店が多い。
それがまさに北海道の寿司のいいところでもあるのだが、
20年くらい前から徐々に新鮮な生きたすしダネではなく、
あえて時間をおき、炙る、煮るといった工夫を凝らしたり、
いわゆる江戸前的な握りのテイストを感じさせる握りを出す店が増えてきている。
そしてそういう店が、ひと手間ふた手間料理にかけている分、
客からも高く評価されていることも少なくないようだ。
そんな握りを提供し始めて10数年、札幌の高級寿司店の激戦区でもある円山エリアで
店を続ける店主の握りはまさに店主の握りに対するポリシーを頑なに追求したものになっている。
鮨菜 和喜智の営業時間は平日は18時と20時30分の2部制。
8席あるカウンターに予約者が全員揃ったところから食事がスタートする。
つまりあくまでもこのいずれかの時間に合わせなくてはいけないのだ。
店主を囲むようにズラリと並ぶ客8人。会話と酒を楽しみながら食べるというよりも、
店主が作るつまみをあまりにも真剣な顔で味わう姿は、他店ではなかなか見ることができない。
僕と同様、一人で来ている60代、70代の親父が真剣につまみの写真を出るたびに撮ったり、メモをしている客もいる。
元来、美味なものはじっくりと一人で食べたいというスタイルの僕なだけに、
この親父たちの気持ちもどことなくわかるような気もする。
ふと聴こえてくる会話から8人のうち半分は東京から来ているリピーターだということがわかった。
後半戦はいよいよつまみから握りに移る。赤酢に強めの塩で味を作るシャリが和喜智流。
ニシン、ホッキ、赤貝、など10カン程度の握りが手際良く出てくる。
軍艦にてんこ盛りにしたウニは手渡しが店主のスタイル。
何という美味さ、なかなか予約がとれないのもうなずける。
食べるのに120分、まるでフルタイムに戦ったプロレスラーのような充実感で店を出る僕だった。
- 浅井 精一
いつのまにかすっかりオヤジになってしまったことに気がついた昭和34年生まれの男。函館出身で母校の函館西高の大先輩が北島三郎、一年後輩が辻人成(といっても面識は無い)。札幌の大学を卒業後、タウン誌編集や10年以上ホテルマンを経験するなどして、現在は編集プロダクション(株)カルチャーランド(札幌・社員24人)代表。手塚治虫マニアであること、昭和40年代のプロレスファンであることで、ごく一部に有名。
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