お邪魔します、用宗へ。(静岡県静岡市)
2022年12月 8日
何やら静岡に面白いまちがあるという。静岡市の旅先で浮かぶのは、世界文化遺産の三保松原、久能山東照宮、久能山いちご狩り、登呂遺跡、おでん横丁、家康ゆかりの地の駿府城界隈、清水港の魚市場や商業施設、駿河湾、旧東海道筋の各宿など。これらのすべてを旅したことがあるし、旧東海道は各所で歩いている。
けど、そこに「用宗」(もちむね)という地名は思い浮かばなかったし、正直、読み方すら知らなかった。静岡駅から2つ先にJR駅があるにも関わらず、気にすることもなく素通りしていた。経済団体から視察のお誘いをいただき、そんな「用宗」をお邪魔してきた。
用宗駅から駿河湾を臨む海岸までは、徒歩数分で着く。駅前には主だった店や建物もなく、静かな海辺の住宅街の雰囲気が漂う。シラス漁や釣り場として有名な用宗港までも歩いて行けるが、駅界隈は港町の雰囲気でもない。ただ、駅前から海岸まで歩いていく道筋には細い路地がめぐらされ、いわゆる開発されていない懐かしい感じのまちが残されている。その「用宗」が古民家の活用や、旧施設の活用、再生、また、新たな施設開発などによって、立ち寄るべき"観光のまち"としてにぎわいを見せているという。
地元の不動産会社の仕掛けによるエリアマネジメントが行われ、地域全体のトーンも統一され、いい雰囲気の界隈が生まれている。古民家活用レストランや新たに建てられた飲食・物販施設、一棟貸しの宿泊施設や温泉施設も、まちの雰囲気を損なわず、違和感なく存在している。新しい施設は出来たものの、生活感が残されたまちであり、われわれ旅人は観光施設目当てというより、そのまちに「お邪魔します」という感覚になる。それは、開発を進める企業も狙いとするところだと言う。
訪れたのは平日の昼間。多くの人がそぞろ歩きをしているわけではなかったが、休日には多くの人が訪れるという。秋の穏やかなお日様に照らされて、美しい駿河湾沿いを散策している人たちもいる。ジェラート屋さんの2階でのんびり食しながら会話をしている人もいる。駿河湾の雰囲気のように穏やかな空気感が漂っている。
夜の雰囲気も見たくて、数日後、再び訪れた。夜はさらに静かなまちで、波の音が聞こえてくるんじゃないかと思えるほどの静けさだった。夜8時過ぎだったこともあり、また、どうやら定休日の店もあったようで、ほとんどの店はやってなく、明かりが残されているだけのところが多かった。けれど、それらを見て回るだけでも、旅人的には面白く、まち歩きを楽しませてもらった。駅からぐるりと約1時間半の夜の用宗散歩。港から見えた夜空に雲が浮かんでいた。夜の用宗も悪くない。
昼も夜も、あまり時間がないなかで訪れた。だから、古くからあるお店や暮らす人々の様子など、十分に見られたわけではない。もっと味わい深く、もっと郷愁感を得られるまちだと思う。今度は賑わいのある雰囲気も見てみたい。また、いつかお邪魔します。用宗へ。
■excite用宗
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- 田中三文(たなか みつふみ)
愛知県豊橋市生まれ。
出版社、シンクタンク勤務を経て、現在は一般社団法人ほの国東三河観光ビューローのマーケティングディレクター。旅人総研代表。愛知大学地域政策学部非常勤講師(観光まちづくり論)。
東海地方を中心に、地域を盛り上げる観光事業や集客計画など、手がけてきたプロジェクトは数知れず。生まれ育った愛知県東三河に腰を据え、地元活性のために奔走する。また、旅人総研代表として、講演やフォトラベライター(旅するカメラマンライター)などの個人活動も実施。旅と写真とロックを愛する仕事人で、公私ともに、さすらいの旅人として各地を巡っている。
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