香りに誘われながら鳥羽のまちなか・ぶらり小さな博物館めぐり
2014年5月26日
昇龍道エリアを代表する観光地の三重県鳥羽市。
青い海と新鮮で美味しい海産物、海女さんや真珠、水族館などが一般的な観光客のイメージだろう。
しかし、鳥羽のまちなかにも旅人の心を満足させてくれる魅力がある。
鳥羽には元来、歴史や文化を語れる素材が数多くあるが、まちなかの4つの小さな博物館が、そんな歴史や文化を十分に感じさせてくれる。
そして今、その4館をめぐる「薫香四館 香りめぐり」が展開されている。
4施設のイメージに合わせて、施設ごとの香りのアロマオイルを置き、それらを香りながらスタンプラリーで巡るものである。
施設のイメージを香りで表現する試みも珍しいが、香りにそそられてのまち巡りも面白い。
そんな香りに誘われながら、まずは、鳥羽駅近くの「門野幾野之進記念館」から。
鳥羽の三賢人と言われた門野幾之進。
その門野家から寄贈された資料が展示される記念館にてまずはスタンプラリー用紙を入手し、鳥羽のまちなかを歩く。
2館目は、門野幾之進記念館の目の前にある「漂泊の詩人・伊良子清白の家」。
明治時代に活躍した詩人・伊良子清白が晩年に鳥羽の小浜で20年以上過ごした診療所兼住宅がここに移築されている。
移築されたものではあるが、あたかもかつてからここに存在したかのようにまちに溶け込み、
鳥羽湾を眺められる部屋からもその当時を思い起こさせてくれる。
まちなかを少し歩くと、3館目の「鳥羽みなとまち文学館」がある。
そこに至るまでの路地裏は、みなとまちの昔の面影も残されており、上述した鳥羽の観光イメージとは少し違った旅情を感じさせてくれる。
風俗研究家の岩田準一の旧邸を改装した同館には、岩田準一の絵画や資料のほか、
彼と交流があり鳥羽ともゆかりの深い江戸川乱歩の書簡などが展示されているほか、
昭和30年代の路地裏が再現された小路があり、ほっとできる懐かしい空間となっている。
鳥羽のまちなかにはこんな路地裏がある。
最後の4館目「鳥羽大庄屋かどや」までは近鉄電車なら1駅と少し距離がある。
けれども、道筋のまちなみや建物、趣ある店、雰囲気のあるお寺などをのんびり眺めながらのまち歩きは
旅人を飽きさせることはない。
そこにはかつて九鬼水軍の城下町であった町割りの面影が残されていたり、
蔵や古くからの建物や路地裏の風景、鳥羽ならではの海産物屋さんなど、みなとまちならではのお店もある。
「鳥羽大庄屋かどや」は、190年前、江戸時代に建てられた大庄屋で、
後に明治時代から戦前まで薬屋を営んできた広野家住宅を改装復元したもので、国登録有形文化財にもなっている貴重かつ由緒ある建物である。
家の間取りや台所などから昔ながらの生活の面影を垣間見ることができるほか、いわゆるハイカラな建物の空間デザインも施されており、
タイムスリップした歴史浪漫に浸ることもできる。
和室から落ち着いた雰囲気の庭を見ながら、あるいは軒先の縁側に座ってお茶でも飲みながら、のんびり時間を過ごすにはとてもよい。
鳥羽駅からの薫香4館めぐり。半日過ごすにはちょうどいいぶらり旅である。
- 田中 三文 (たなか みつふみ)
愛知県豊橋市生まれ。
出版社勤務を経て、現在は三菱UFJリサーチ&コンサルティング 政策研究事業本部 上席主任研究員。
愛知大学地域政策学部非常勤講師(観光まちづくり論)
地域を盛り上げる観光事業や集客計画など、手がけてきたプロジェクトは数知れず。
2012年より2014年まで昇龍道プロジェクト推進協議会・台湾香港部会長を務め、
同エリアのインバウンド促進計画や外国人受入環境整備などにも力を注いでいる。
旅と写真とロックを愛する仕事人で、公私ともに、さすらいの旅人として各地を巡っている。
日本の真ん中に位置する中部北陸地域の形は、能登半島が龍の頭の形に、三重県が龍の尾に似ており、龍の体が隈無く中部北陸9県を昇っていく様子を思い起こされることから同地域の観光エリアを「昇龍道」と呼んでいます。
この地域には日本の魅力が凝縮されており、中部北陸9県が官民一体となって海外からの観光客誘致を促進する「昇龍道プロジェクト」も好調です。このブログでは、「昇龍道」の四季折々の姿を写真と文章で紹介していきます。
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