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コラム カメラマンが行く!プロゴルフトーナメント

バンテリン東海クラシック 2022

バンテリン東海クラシック 2022

優勝カップを掲げる河本力。ルーキーイヤーで2勝目は松山英樹、金谷拓実に次ぐ3人目。

優勝カップを掲げる河本力。ルーキーイヤーで2勝目は松山英樹、金谷拓実に次ぐ3人目。

 新たな時代の幕開け…。低迷する国内男子ゴルフにも明るい兆しが見えてきた。22歳の怪物ルーキー、河本力が桂川有人(24)を振り切り8月の初優勝に続くツアー2勝目を飾った。

 バンテリン東海クラシック最終日最終組、地元愛知出身の桂川有人が15アンダーで首位スタート。4打差11アンダーで河本力が続き、10アンダーで池田勇太という「中々良い」面子だ。このまま桂川の逃げ切りか?とも思われたが…川本は1番バーディースタート。桂川も2番でバーディーを決め、河本を再び引き離すも6番でボギー。「昨日より速くなっていて迷いが生じた」という6番のパット。この悪いイメージを引きずり7番でもボギー、8番ショートでは3オン2パット、ダブルボギーを叩いてしまう。これで4打差あった貯金は1打差に…。続く9番では河本がバーディーを決め、桂川と並び首位タイで後半バックナインへ突入。桂川は10番バーディーで再び引き離すも河本も追いすがり、11番バーディーで並ぶ。勝負は15番ロングか? 河本は屈指の「飛ばし屋」だ。スタッツではドライビングディスタンス326ヤードでダントツの1位。初日に375ヤードを記録した15番、しっかりとイーグルを決め、パーセーブの桂川に2打差逆転。そのまま行くか?と思われたが「緊張して鼓動がすごかった」という16番はボギー。17番は右斜面の林の中に入れあわやOBギリギリ。普通の若い選手であればここで崩れてもおかしくはないが、ここも“大物”。冷静に対処してボギーで乗り越えた。この頃、桂川は冷静を取り戻すもバーディーパットが決まらずパーセーブが続く。並んで迎えた最終18番ティーショット。桂川はフェアウェイ真中、河本は右ラフ。セカンドショットは供にグリーンピン奥の同じ位置に…。カップから僅かに遠い桂川が先にパット。下りのフックラインは僅かに外れた。

健闘を称えあう桂川有人(24)と河本力(22)。今後、男子ツアーを牽引する二人。

健闘を称えあう桂川有人(24)と河本力(22)。今後、男子ツアーを牽引する二人。

 同じポジションから先に打った桂川のラインを見極めた川本が、バーディーパットを沈め2勝目を挙げた。河本曰く「あれが入っていたら桂川さんの優勝」と覚悟を決めていたという。僅かな距離差「すごく参考になったという桂川のパット」これも刹那というか…。打順が逆であれば桂川が優勝を決めていたのだろう。8月の「SanSan KBCオーガスタ」優勝後「次(2勝目)は大変だよ、と皆に言われていたが、こんなに速く2勝目を挙げることができてほんと嬉しい」。ルーキーイヤー2勝は松山英樹と金谷拓実次ぐ3人目。「これからも3勝、4勝とできるように精進して頑張っていきますので応援よろしくお願いいたします」。

 ルーキーイヤーの今年はレギュラーシードが無く各試合予選会からチャレンジ。つい3カ月前まで下部のAbemaツアーで撮影した若者が夢のような活躍をしている。新たな時代の幕開けを感じさせた最終日、国内男子ツアーの夜明けは近し…。

桂川は8番でバンカーショットをミス。ダブルボギーで貯金は1打差に縮まる。

桂川は8番でバンカーショットをミス。ダブルボギーで貯金は1打差に縮まる。

 河本力は2000年生まれの22歳。昨年下部のAbemaツアー「TIチャレンジin東条の森」でアマチュア優勝。今年プロ転向し、8月の「Sansan KBCオーガスタ」でルーキーイヤー優勝を成し遂げた。姉の結さんもプロゴルファーで、黄金世代の一人だ。その河本の魅力は何といっても圧倒的な飛距離にある。JGTOの部門別データを見るとドライビングディスタンスは1位で326ヤード。前述のとおり15番では初日に375ヤードを記録している。土曜日に行なわれたドライビングコンテストでは2打とも曲げてしまい記録無しに終わったが「普通に打てば力の優勝だ」とチャン・キムに言わせた。本人曰く「飛距離は武器にもなるし凶器にもなる。昨年の自分は凶器だった。最近はどれくらいで振れば思う所に球が行くかがわかってきた」しかし「ギャラリーが驚いたり喜んでくれると、嬉しくてついついドライバーを大振りしたくなる」という欠点も自覚。雰囲気に流されない「大人のゴルフ」が課題。因みにフェアウェイキープ率は49.5%90位と低めw

 飛距離はPGAツアーにも匹敵するが、米ツアーへの参戦は考えているのか?

「自分の実力はまだまだだと思う。ボロボロにやられて帰ってきた人(姉)を見ているので…、あんなにメンタルやられるんだって…。行くのであれば行ってすぐ勝てるような力をつけてから行きたい。」。

中島啓太は昨年パナソニックオープンでアマチュア優勝。今夏プロ転向。今大会がプロ2戦目だ。河本は日本体育大学の先輩だ。もっとも期待できる選手の1人、ポーカーフェイスがウリ?

中島啓太は昨年パナソニックオープンでアマチュア優勝。今夏プロ転向。今大会がプロ2戦目だ。河本は日本体育大学の先輩だ。もっとも期待できる選手の1人、ポーカーフェイスがウリ?

 と、米ツアー参戦を目標とするも慎重。もう1人の注目ルーキー、中島啓太とは日本体育大学の先輩と後輩だ。今大会期間中も毎日「肉」を供に食べた仲で、支払いは「じゃんけん」だそうだ…。

 この原稿を書いている途中「日本オープンでアマチュアの蝉川泰果が優勝」のニュースが入ってきた。パナソニックオープンに次ぐプロレギュラーツアー2勝目。それも伝統の「日本オープン」。

 今年、国内男子ツアーの景色が明らかに変わった。変革、それは石川遼がただ1人牽引していた10年前ではない。その風景には石川もいなければレジェンドもいない。昨今の主役は20前後の若手に移り、今大会優勝の河本力(22)や桂川有人(24)、金谷拓実(24)、中島啓太(22)、久常涼(20)、岩崎亜久竜(24)、大岩龍一(24)(私の推しも入っている)などなど、枚挙にいとまがない。

 近年の国内若手女子の躍進も宮里藍の華々しい活躍を見て育った世代が活躍している。男子も遅ればせながら松山英樹や石川遼、宮里藍の活躍に刺激を受けたジュニア達が、成長し活躍する時代に差しかかっているのではないか? プロ転向を控えた蝉川も「油の乗る30歳までは日本ツアーで頑張りたい。たくさん優勝して賞金王を何度も取りたい。海外にもスポット参戦してパット優勝できる選手になってJGTOを盛り上げたい」と言っている。

 今大会は池田勇太が最終組で若手に挑んだが、体調不良のため本来のパフォーマンスを発揮することなく終わったのは残念。彼ら若手の前に石川、池田が立ちはだかり、たまに松山が帰ってきて参戦。う~ん夢のような競演。更に彼らが優勝争いをするような試合展開が度々あれば男子ツアーも盛り上がることだろう。それにつけて彼らは若さもあってか気さくだ。「プロゴルファー」という変なプライドも無いため親しみやすい。近い将来男子ゴルフ全盛期の「AON」のような時代が再び訪れるような予感するワクワクする今大会だった。

2022年11月09日

コラムフォト

取材担当プロフィール

山之内 博章 やまのうち はくしょう (はっちゃんと呼ばれています。)
1967年2月24日名古屋市生まれO型の魚座です
ゴルフフォトグラファーをやってますが、他に人物や商品も撮ります。
特技?なんだろ?カラオケは大好き。